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「時間を取ってもらってすまないね」
いえいえ。こちらこそご足労いただきありがとうございます。
わたしの前にはフリード様とパウルさんとテオバルトさんがいた。
イヤな役をお任せしてしまって申し訳ないです。
「いえ、でもあのような形で拒否されるとなかなか辛いものがありました」
「演技と分かっていても、肝が冷えましたよ」
まぁ演技ではなくて、釘をさす意味でほぼほぼ本気でしたからね。
フフフ。あわよくばって思ってたことは分かってますわよ。
「・・・完敗だね。パウル、テオ、これ以上女神にお願いはダメだよ。これは王命だからね」
「分かっています。いくら私でも命は惜しいので」
「もちろんです。ユウリ様を敵にまわしたくはありませんから」
そんな風に言われるほど酷いことした覚えがないんだけど…まぁいいいか。
で、王国としての意見を聞かせてもらおうか?
実は今回のユウリ様に丸投げ相談事件は事前に打ち合わせて行った寸劇だった。
目的は王城くんがもし王国で暮らしていくとしたら起こるであろう問題と、フリード様にどれだけいい子なのかを知ってもらうためだ。
そして、貴族さんたちへの牽制。
今回のあれやこれやで貴族の皆さんは全員何かしらやらかしており、全員が処罰対象だったそうだ。
しかし本当に全員を処罰してしまうと国がまわらないので、一部だけとなった。
あぁ、あの場に居なかった人たちね。
処罰を免れたもののなかには心を入れ替えて職務を全うしようと奮起している人がほとんどだけど、中にはこれ幸いと反省していない人もいるとのこと。
ちなみにその人たちってば、わたしを王国に取り込んで自分たちの尻拭いをさせようとか考えてるんですって。
なんでそんなやつを処罰しないのさってフリード様に聞いたら
「まぁ、外道には外道なりに使い道があるからね」
だそうです。
多分処罰された人たちよりも、この外道さんたちの方が今後地獄を見ることになるんだろうなと思いました。なーむー。
ま、そう言うことで一応ハッキリと国のお願いなんて聞かないんだから!というアピールをするとともに外道の炙り出しも兼ねていたわけだ。
「いやぁ、ユウリ様が出ていかれた後に一悶着ありまして」
「おかげで外道が確定できましたよ」
「これで心置きなく改革が進めらる。本当に君は僕の女神だよ」
・・・さよか。
お三方のいい笑顔にわたしはドン引きした。
結果オーライならいいけどね。
そういうことでお互いの利害が一致して、今回の寸劇とあいなったわけです。
んで、フリード様的に王城くんはどうかね?
「仕方ないことだけどやはりまだ幼いね。でも聡明であることも確かだ。これからの学び次第でいくらでも化けるだろうね」
でしょ、でしょ?
「だから、もし彼がこの国での生活を求めるなら僕が責任を持つよ」
して、その心は?
「彼がここに残れば女神はまたこの国に来てくれるだろう?」
・・・いや、普通に寄るけど。
「ダメだよ女神。寄るだけで僕に会いに来るつもりはないのは分かっているよ」
チッ。お見通しか。
「ふふふ。それに本当は彼に安定した生活をさせたいと思ってることもね」
・・・
なんでわたしの周りって嫌なやつしかいないんだろう。
「だって、僕はね女神。君の願いは何でも叶えてあげたいんだ」
「フリード!?自分の言ってること分かっているのですか?!」
「もちろん分かっているよ」
「何でもって…お前、正気なのか!?」
「もう、うるさいなぁ。さぁ女神。なにも気にすることないよ。君の望みを言ってごらん?」
・・・・・たい
「ん?なんだい?」
温かいご飯と味噌汁が飲みたいっ!
「え?」
ねぇ、もうどんだけお米食べてないと思う?半年以上だよ…召喚前は毎日お米食べてたのに…
ありえないっ!
味噌汁なんかこっちにきてから一度も飲んでないし…あ、そうだ!大豆!大豆をくれよ!ここ農業大国なんだからあるよね、大豆!?
フフフ…大豆があれば味噌も醤油も豆腐だって食べれるじゃない…
なんでもって言うなら大豆を、お米を頂戴っ!
あの味が忘れられないのっ!体が欲してるのよっ!お願いしますっ!
「「「・・・」」」
はぁ、はぁ……はっ!
ご、ごめんなさい。今のはナシで!
なんかちょっと疲れてたっていうか、こう我慢の限界を越えたっていうか…ほら、人間誰しもそういう時があるでしょ?ね?ね?
「「「・・・」」」
お願いだからそんな怯えた目で見ないでぇ!
次回200話です。
まさかこんなに続くなんて…
これも皆様のお陰です。ありがとうございます!