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「どうやら女神も加護を持ってるようだね」
えっ、なんでそれを…
「僕の魅了が効かないのは加護を持ってる人がほとんどだからね。パウルとテオは不運と災難の神の加護を持っているんだよ」
・・・
そういった神様もいるんだ。
なんとなく温かい目で2人を見てしまったのは仕方ないと思う。
えーと…本題に戻ってもいいかな?
その後、ルドルフ伯爵の話をようやく聞くことができた。
まぁ、簡単に説明すると
仲良くなった帝国の担当者にフリード様のことを相談。
何故かそれがお姫様の耳に入り、独り占めしたいルドルフ伯爵とイケメンに食いついたお姫様の利害が一致して、フリード様を秘密裏に帝国に連れ出すことになった。
いざ連れ出してみれば、フリード様は帝国にボッシュートされてしまった。
それでも全く会えないわけではないので、足しげく通っていたら…
王国のフリード様大好き派にバレた。
それから長い間、帝国と王国の間で水面下の争奪戦が行われていたが、英雄の召喚のどさくさに紛れてようやくフリード様を王国に戻すことが出来た。
その後争奪戦の舞台は王国に移ったのだが、事情をよく知らない末端のものが勝手にフリード様を売り飛ばしたことが判明。
慌てて一時休戦協定を結び、フリード様を連れ戻すために兵を向けた、と。
・・・えーと。
まず、フリード様はおかしいなと思わなかったのかな?
「それが不思議なことに、その当時はおかしいと思っていなかったんだ」
あぁ…そうだった…
帝国じゃ自我がなくなっちゃうんでしたね。
「まさか王国がこんなことになっているとは…」
部屋を重苦しい空気が支配した。
・・・どないしよ。
これ以上話なんか出来なくない?
一応帝国との関わりはなくなってるみたいだし、でもこれだけは確認しておかないとまずいよな…
あの、フリード様。
一つお聞きしてもよろしいでしょうか?
重苦しい空気の中、恐る恐る疑問をぶつけることにする。
「ん?なんだい?」
その、現在も愛の神様の加護は発揮されているのでしょうか?
「そうだね…加護は継続して発動しているよ。今は恐怖の方が勝っているようだけど、こんなのは一時的なものだからしばらくすれば元に戻ってしまうだろうね」
怖くて聞けないけど、加護に勝る恐怖ってなんやねん。
でも真面目な話、このままじゃまた同じようなことが起きないとも限らないわけで。
ちなみに加護が無くなってもいいですか?
このわたしの質問に、フリード様は力なく微笑むと
「無くなればいいと、ずっと願ってるいよ…」
と小さく呟いた。
・・・ケビン!
"はっ!"
聞いていたな?
それで加護の取り消しは出来ないものなのか。
"出来ないこともありませんが…"
それなりのリスクがあるのか。
"ご明察の通りでございます"
そうか…
しかし加護の効力を押さえるならどうだ?
"それならば可能かと"
すぐに出来るか?
"少々お時間をいただきたく存じます"
どれだけかかる?
"5日、いえ、3日頂けますでしょうか"
わかった。必ずや3日で完遂させよ。
"はっ!"
これでなんとかなれば良いのだが…
って、なんで謎の組織のボスみたいな感じになってんだろう…
"いやぁ、たまにはこういうのもありですね!"
・・・ケビンよ。
"はい、ボス!"
この前虫さんを眷属にするなって言ったよな。
"ソンナコトシテマセン…"
いやいや、急に目の前で虫がホバリングしてたらイヤでも分かるわ!
このバカチンがぁっ!!!
"も、申し訳ございませんでしたぁ!"
謝るくらいならすんなっ!仕事しろアホっ!
"うわぁーん!ユウリさんが正論という拳で殴った!"
訳のわからない捨て台詞を吐きながら消えたケビンの後ろから微かに拍手と歓声が聞こえたのは気のせいだったと思いたい。