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「……れ」
ん?なんか聞こえなかった?
わたしはキョロキョロと辺りを見回すと声のした方にうつむいているフリード様を発見。
んん?なんかフリード様の周りに煙みたいなのが見えるけ、どっ?!って、うぉい!
なんの前触れも説明もなくフェルくんがわたしを俵担ぎにし、物凄いスピードで出口に向かって走り出す。
もちろんシルバくんも一緒に。
そしてわたしたちが走り出したと同時に大きな声が響く。
「黙れっ!」「「逃げろー!」」
それは一瞬の出来事だった。
フリード様を中心に部屋にいた半分以上の人たちの足が氷漬けになったのだ。
この突然の出来事にパニックになるお偉いさんたちを掻き分けて懸命にフリード様の元へ向かうパウルさんとテオバルトさんが必死に声をかける。
「フリード、落ち着きなさい!」
「黙れと…」
「ちょ、これ以上はヤバイって!」
「言ってるだろうがっ!!!」
「「や、やめろーっ!」」
しかし、2人の必死の制止もむなしく
お偉いさんたちはもれなく全員が
氷漬けになった。
止めに入ったパウルさんとテオバルトさんも。
ちょ、どういうこと?
目の前の光景に唖然とするわたしの横で
「ギリギリでしたが、間に合いましたね」
「うん。危なかった」
と言いながらわたしを肩から下ろすフェルくんとシルバくんの表情は言葉とは裏腹に全然余裕そうだった。
いやいや、わたしたちは確かにギリギリセーフだった?かもしれないけど、この状況は色々アウトじゃないか?
「ユウリ様がご無事なら」
「それでいい」
・・・さいですか。
「ふぅ、やっと静かになったか」
フ、フリード様?
「さて、僕の女神」
・・・
はっ!わたしのことかっ!
はい、なんでしょう?
「申し訳ないが話はまた明日でもいいだろうか?」
はい!もちろんでございます!
「残念なことにこの国の王として、早急に確認しなければならないことが山ほど出来てしまってね」
さ、左様でございますか。
「本当は女神と話したかったけど、今日は此処にいるもたちと色々と話をしたいんだけど、いいかな?」
どうぞ、どうぞ!
「また明日、僕たちが出逢ったあの商館で逢えるだろうか?」
全然大丈夫です!お待ちしてます!
「せっかくここまで来てくれたのにすまないね。ではまた明日」
はい。また明日よろしくお願いします!
失礼します!
こうしてわたしたちは色んな意味で冷えた城を後にした。
フリード様ったら最後の方はずっと笑顔だったけど、目が笑ってなくて生きた心地がしなかった…
この後どんなお話し合いがされるのか…
想像するだけでも恐ろしい。
博愛精神溢れる人たらしのぽわぽわイケメンなんて思ってスミマセン。
明日は氷漬けにならないように、抱きつかれるくらいは我慢しようと思います。