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それは翌日には王国というところで、夜営の準備をしているときだった。
一番最初に異変に気付いたのは、やはりアセナさんだった。
珍しくわたしに毛繕いをさせてくれていたのだが、突然小型化を解除して大きくなったかと思ったら木々が生い茂る森に向かって走っていってしまった。
ちなみにわたしは大きくなったアセナさんに弾き飛ばされて地面を転がった。
それはもう、ゴロゴロ、ゴロゴロと転がりましたよ…
派手に転がったけど特に怪我はなかったので、ヨロヨロと立ち上がればシルバくんたちはアセナさんが走っていった方を向いて臨戦態勢をとっていた。
「あの、ユウリさん、大丈夫ですか?」
"ユウリさま、いたいいたい?"
王城くんとハンサちゃんだけが転がったわたしを心配してくれた。
心配してくれてありがとう。
この通り汚れただけだから大丈夫。
そう言ってわたしは自分自身にクリーンをかけると、さりげなく王城くんを後ろに庇う。
すると木々が揺れ現れたのは、所々服が破け怪我をしている亜人の子どもたちだった。
子どもたちは10人ほどで年はバラバラ。
わたしたちを見て怯えていたのでシルバくんたちに警戒を解くように声をかける。
そしてわたしは子どもたちに大丈夫だと声をかけ、すぐさま『エリアヒール』を発動させた。
それによってこちらに敵意が無いことを分かってもらえたようで、何人かは泣き出しその場にしゃがみこんでしまった。
するとまた木々がざわめき、現れたのはアセナさんに追いたてられながら必死の形相で逃げ惑う武装した5名の男たちだった。
男たちが現れると子どもたちは慌てて立ち上がり逃げようとする。
ちょ、落ち着いて、大丈夫だから!
バラバラになったら守れないから!
わたしの声は届いたようで、子どもたちがわたしの後ろに一塊になった。
うん、確かにバラバラにならいでとは言ったけど、そんなぎゅうぎゅうにならなくても大丈夫だから、ちょ、落ち着いて、押さないでって、あ、ダメだ。もう無理…
グシャ
わたしは子どもたちの下敷きになった。
「ユウリさーん!」
子どもたちと一緒にわたしの後ろにいたはずなのに、何故か下敷きを免れた王城くんの叫びが遠くに聞こえた…
お、お願い。早う降りて、このままだと死んでまう…
わたしの上から子どもたちがいなくなり顔を上げれば、アセナさんに追い回されていた男たちはシルバくんたちによって縄でぐるぐる巻きにされている所だった。
「何をされているんですか…」
呆れた様子のシルバくんがわたしのもとにやってきて起こしてくれる。
いや、なにって、このボロボロの様子を見たらわかるやろ。
「・・・そんなことより、これからどうしますか?」
自分から聞いておいて、そんなことよりとかひどいっ!
でも、まぁ、いいよ。
いつものことだからね…
とりあえずぐるぐる巻きで喚いてる男たちはアセナさんに黙らせてもらって。
わたしたちは事情を知っているだろう子どもたちに話を聞きかせてもらうことから始めましょうかね。