16
まず2人に部屋に置いてある今日買ったものを持ってきてもらう。
大人3人の旅の荷物となるとそれなりの量になるのだが、アイテムボックスに収納してみるとレベル1の割には結構入って最終的に手ぶらで旅が出来ることが判明した。
嬉しい誤算である。
「荷物が少ないのはよいことですが、本当に手ぶらで旅をしていては怪しすぎます。それに、ユウリ様しか利用できないのが難点ですね。なので、最低限の荷物は各々のバックに入れておいた方がよいでしょう。」
確かに。手ぶらで旅してたら怪しさ満点だ。
それに、何かあったときに私が全部持ってたんじゃ困るよね。
アイテムボックスにしまった荷物を再度取り出し、
必要なものを選定しそれぞれのバックにしまっていく。
まぁ、私の分はアイテムボックスに入れましたけどね。
「これだけの少量なら随分楽になります。」
「ユウリ様、ありがとう。」
少しは役に立てたようで良かった!
荷物も片付いたし、最後に加護について聞いてみることにする。
「加護、ですか。スキルと違ってかなり貴重なものになります。持っているといわれるのは国の重鎮や教会の偉い方などでしょうか。」
おっと、これは絶対に持ってるって言わないようにしよう。
やっぱり面倒な気がしたんだよね。
昔からわたしのこういう不安って当たるんだよね…
と、とりあえず行き先も決まったし。
歩いて1日とはいえ街の外は危険も多く、何があるか分からないので早めに出発することに決めて、2人は部屋にお戻りいただいた。
今日も今日とて色々ありすぎて疲れましたわ。
私のはフラフラとベットに入るとすぐに寝てしまった。
部屋に戻った2人がとんでもない誤解をしているとは知らずに・・・
部屋に戻った二人は、自分達の雇い主が最後に加護について聞いたことに違和感を覚えていた。
「フェルディナン、ご主人様についてどう思いますか?
常識的なことはご存じないのに加護についてお聞きになるなんて違和感を感じませんか?」
「そんなの決まってる。」
「やはり、貴方もそう思いますか。」
2人はすぐに答えにたどり着いた。
ユウリが加護を持っていると。
加護を持ち、上級の白魔法の使い手となれば思い浮かぶのは神々によって選ばれるという伝説の聖母様のことだ。
聖母様が現れたのは遥か昔に召喚された5人の英雄たちが多大なる功績を残し天寿を全うしたあとに起きた。英雄達の功績を財産を全てのものを自分のものにしようとして泥沼の戦争時代が始まったのだ。
いつまでも終わらないこの愚かな戦争を嘆いた神が、異世界より遣わした一人の女性がいた。
それが聖母様であった。
彼女は長きに渡る戦いを終わらせ、この世界に真の平和をもたらしたとするこの世界の人間なら誰でも知ってる物語。
2人は命を助けてもらったことも重なり、確信する。
自分達のご主人様がその物語と同じ神に遣われし聖母様であると。
これがただの誤解か、はたまた真実となるのかは
まさに神のみぞ知る。