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チッ、逃げかられたか。
なんてね。
いやぁ、死ぬかと思った!
なにあいつ。マジでヤバいやつやん。
わたしはその場に座り込むと今更ながらに全身を震えが襲う。
部屋を見渡せばわたしと同じようにみんなも座り込んでいた。
さてと。
これからどうしたもんかね。
まずは石になったお姫様を助けますか。
わたしは這ってお姫様に近付くと『ヒール』をかける。
しかしお姫様は元に戻ることはかった。
嘘、なんでよ?!
『ヒール』は万能なはずでしょ!?
戻れ、戻れ!
何度も『ヒール』をかけるわたしの手を掴み止める者がいた。
「ユウリ様、もうお止めください」
うるさい。すぐに元に戻してあげるんだ。
わたしを止めたのはシルバくんだった。
しかしわたしはそのシルバくんの制止を無視して『ヒール』をかけ続ける。
バチンッ
そんなわたしの頬をシルバくんが叩いた。
わたしは叩かれた頬に手を当てる。
分かってる、本当は分かってるよ。
どんなに『ヒール』をかけようが元に戻すことかできないことなんてわたしが一番分かってるんだよ。
わたしはそんな自分の無力さを痛感し涙がとまらなかった。
・・・・・
部屋は沈黙が支配していた。
き、気まずい。
いや、わたしが暴走した上に泣いたのが原因なんだけど。
なんか泣いたらスッキリしたっていうか。
どないしよ…
あ、あの…
"わらわを楽しませてくれる強者はおらんのかぁ!"
わたしが皆に声をかけようとしたその時。
異常にテンションが高い毛玉が部屋に飛び込んで来きた。
突然やって来て部屋中を走りまわったと思ったら、なんとお姫様の石像に激突しやがった。
あーーーっ!!!
わたしは慌ててお姫様に駆け寄る。
幸いなことに倒れただけで目立ったキズなどはなかった。
ちょっと欠けたところはあるけど、大丈夫だよね?ちょっとなら大丈夫だよね?!
"おっ!お主らはここにおったのか"
わたしはのんきなアセナさんにぶちギレた。
こんの、毛玉ーー!!!
ここにおったのかじゃないわ!
今、自分が何したか分かってんのかっ!?
"な、何をそんなに怒っておるのだ?"
これっ!
わしたは倒れたお姫様の石像を指差す。
お前が、今、激突して、倒したのっ!
"ん?その石像がどうかしたのか?"
どうかしたのか?じゃないのっ!
この石像はわたしたちの目的だったお姫様なの!
"なんじゃ、姫とは石像だったのか"
・・・・・
そんなわけあるか!ボケェ!
「さ、咲来さん、落ち着いて」
"そうじゃ、そうじゃ。ボソッ…これだから鬼ばばは"
ああん?これが落ち着けるわけないだろうが!
あと、鬼ばばって聞こえてるからなぁ!
部屋は荒れ狂うわたしによって修羅場と化した。
そんな中、タイミング悪く突撃してきた者がいた。
「おい姫!無事かっ、あっ!お前はっ!」
それはいつぞやの英雄くんだった。
なんじゃ!わしゃ、今忙しいんじゃ!
やんのか!ああん!?
「ひ!すいませんでした!」
謝るくらいなら初めから絡んでくるんじゃないよ!
英雄くんはわたしの剣幕にビビって半泣きになり、緑木さんに慰められるのだった。