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現在わたしはハンサママの背中にいます。
前回は色々と必死だったから気が付かなかったけど早すぎやしないか、これ。
現在わたしたちは移動中なのだが、想像以上にスピードがえげつない。
風除けの魔法のおかげで風圧を感じるこは無いが、昼間の飛行だけあって景色がものすごい早さで流れていくのがよく見える。
わたしはヒモでくくりつけられているシルバくんに改めてしがみつく。
「ユウリ様、首を絞めております。風除けの魔法もございますし、そんなにしがみつかなくても大丈夫ですよ」
バッキャロー!
こんなもん落ちたら一発でアウトだわ!
首を絞めてごめんよっ!
そっと隣を見れば、スゲーとはしゃぐ小さなガルくんの背中にわたしと同じようヒモでくくりつけられている緑木さんがしがみついていた。
そして緑木さんは恐怖の限界を超えたのだろう。
突如般若心経らしきもが聞こえてきた。
人は自分よりパニックになっている者を見ると冷静になる。
わたしはシルバくんの首からそっと腕を離した。
そんな感じで出発してからそろそろ3時間以上。
かなりのスピードで飛んでいるのにいまだにカーザにたどり着かないとはなぜなのか。
まさか迷ってしまったのかとハンサママにカーザはまだかと訪ねる。
"すでにカーザに入っております"
そっか。じゃそろそろ着陸かな?
"ユウリ様、一つよろしいでしょうか"
はい、どうしました?
"今回は時間との戦いとのことでございましたね?"
はい。そうですね。
早ければ早いほどこちらには有利に進むと考えてますが。
"左様でございますか。ならばやはりここは久しぶりに全力を出したほうがよいようですね"
ん?どういうっ!?
ちょっ、えっ、まっ!
Gが!Gがすごいんだけど!
ただでさえ、えげつないスピードが更にアップしたことによりとんでもないGがわたしたちを襲った。
ハンサママ!早い!早すぎるよーっ!
"バカ言ってんじゃないよ!あたいの本気はまだまだこんなもんじゃないよっ!見せてやるよ最速の向こう側をねっ!"
いやいやいや!最速の向こう側ってなに!?
急にどうしたっていうのよ!?
"あたいのスピードについてこれるかな?"
ハンサママの急な豹変とスピードによりわたしはシルバくんにしがみつく。
「ユウリ様。また首を締めております」
バッキャローッ!
首がどうした!
死ぬ!このままじゃ死ぬー!
「落ち着いてください」
ムリムリ!落ち着けるわけないでしょ!
「わ、わかりましたから、せめて腕を…グェ」
シルバくんから聞いたことない声が漏れたが、そんなの知ったこっちゃない!
もうダメだー!
あんなにキャラが豹変して無事ですむわけなっ…ぐはっ!
お腹に衝撃が襲ったと同時にわたしの意識が遠退いていく。
シルバ殿、またか、また実力行使か。
わたしも学習しないな…ガクッ
こうしてわたしは完全に意識をなくした。