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あー、お見苦しいものをお見せしました。
泣き崩れたわたしは女の子に頭をなでなでされながらグシグシと涙を拭い、懸命に仕切り直しをはかるが空気が重い。
特に英雄さんたちの凹みようが尋常ではなかった。
それはもう、あれ?お葬式かな?と思うほどに。
わたしがトゲトケ攻撃したこともあるが、自分たちを助けようとしてくれた人に鬼ばばやら敵意剥き出しで対応したことを大変反省しているようだ。
でもまぁ、ほら。追われてた身としては色々警戒するのは致し方ないことだし。
だからね。シルバくんもフェルくんも無言で威圧するのはやめなさい。聖女様方もですよ。
「「「ですがっ!」」」
や・め・な・さ・い。
わたしは問答無用と皆に釘をさすと、英雄さんたちに向き直る。
ようやく帝国から逃げられたっていうのに、ごめんなさいね。
あの国、とんでもなくしつこいから大変だったでしょ。
わたしの豹変ぶりと問いかけになんと答えていいのか分からなかったようで、緑木さんに視線で助けを求める英雄さんたち。
視線を受けた緑木さんが
「ご助力いただき、感謝いたします」
と言って頭を下げるのを見て英雄さんたちも慌てて頭を下げる。
ちょ、やめてよ。頭なんか下げないで。
確かにお願いされたことだけど、助けると決めたのはわたしの勝手なんだから。
それに今回の件は何処ぞの毛玉があることないこと吹き込んだのが原因のようだし…ね?
そう言ってわたしの脇で姿勢正しく座っている今回の騒動の元凶である絶賛ガルブル中のアセナさんを見る。
ふふふ。
本当に何を言ったのか後でよーく聞かせてもらいましょうね。
"・・・"
さて絶望しているアセナさんは置いていて、
気を取り直して改めて自己紹介といきましょうかね。
えー、わたしの名前は
「咲来さんのお名前はもう聞きましたよ。」
あれ、そうだったけか。
じゃ、今度はそっちの番でお願いします。
英雄さんたちは年の上から順番に名前を教えてくれた。
「茶山真土。」
「水川蒼生でーす。」
「お、王城龍希です。」
はい、ありがとう。
じゃ、自己紹介も済んだことだし今日はここまでで。
「よろしいのですか?」
わたしの提案に皆は困惑していた。
だって英雄さんたちの無事が確認できて、アセナさんも捕まってた訳じゃないってことが分かったんだし十分でしょ。
それにもう子どもたちは寝る時間だし、なんてったってわたしが限界です!
教皇様、この部屋をお借りしてもよいでしょうか?
「もちろん構いませんが、こちらではなくて別にお部屋を準備いたしますが…」
お気遣いありがとうございます。
でも、このお部屋で十分です。
あ、でも英雄さんたちにはお部屋を用意していただいてもよろしいでしょうか。
長旅でお疲れだろうし、久々の再会で積もる話しもあると思うので。
「承知いたしました。では、英雄様方はこちらに。お部屋にご案内いたします。」
教皇様が英雄たちを連れて部屋を出ていくのを見送り、完全に見えなくなるとわたしは毛玉に声をかける。
さぁ、アセナさん。
鬼ばばとはどういうことか、詳しく聞かせてもらおうじゃないか。
"お、おぬし限界ではなかったのか!?寝るのではないのか?!"
ええ、限界ですよ…
堪忍袋の緒がなっ!!
"ま、まて!話せばわかる!話せば…アーーー!!"
教国の首都の夜空に狼の泣き声が響き渡った。