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わたしたちはお馬様の頑張りによりついに教国へ突入した。
わたしはふと思い出す。
シイナさんに渡された紙の束の存在を。
そしていまだ真っ白なままの紙の束に絶望したわたしは緑木さんに泣きついた。
絵心あったりします?
「可もなく不可もなくと言ったところですけど…」
お願いします!助けてください!
緑木さんはわたしにとって英雄だった。
可もなく不可もなくとか言って、めちゃめちゃ上手やないか。
お陰で紙の束は真っ白から脱出することが出来た。
本当にありがとうございます。
そんなこんなで走り続けて、ついに教国の首都一歩手前の村に到着した。
いつものように掘っ立て小屋で休憩していると、ブラックシャドウが慌てた様子でやって来た。
おうおう、どないした?
「アセナ様たちが首都で拘束されました。」
はいっ?!
ちょ、拘束ってどういうことっ!?
「実は数日前から狼に乗った盗賊が村を襲っていると噂が出回りまして…」
やられた…
確かに狼に乗って走っていたら盗賊に間違えられてもおかしくない。
現にわたしたちが帝国で取っ捕まえた本人だし。
「今、聖女様方が対応に当たってくださっていますので、すぐにどうこうはならないとは思いますが…」
失敗した。
教国は通過するだけと特には根回ししてなかったことが仇となったか。
レオくん、お馬様は出発できそう?
「かなり無理をさせたので一晩は休ませないと厳しいです。」
レオくんがお馬様の様子を見ながら申し訳なさそうに教えてくれた。
いや、お馬様は十分頑張ってくれたから休んでちょうだいな。
お馬様がダメとなると、どうしたものか…
「あの、私が乗ってきた馬にユウリ様だけをお連れするということは難しいでしょうか。」
おお!その手があったか!
「ユウリ様だけというのは…」
ブラックシャドウからの提案にわたしは乗せてもらう気満々だったが、皆がわたしだけというところに難色を示す。
そんなこと言ってる場合じゃ…
んん?なんじゃありゃっ!?
わたしの目に写ったのはこちらに向かって来る大きな鳥の姿だった。
その大きな鳥はわたちたちの真上まで来ると暴風を起こして目の前に着陸した。
あまりの風圧でわたしは地面を転がってフェルくんに引っ掛かって止まった。
「大丈夫?」
ありがとう。フェルくんに引っ掛からなかったら何処まで飛ばされたか…
風が止みフェルくんに手伝ってもらって体を起こせば、そこには手○治虫の火の鳥を彷彿とさせる大きな赤い鳥がいた。
え、なに?食べられちゃう感じですか?
とんでもない緊張感があたりを包む中、火の鳥の方から小さな鳥がやってくる。
んん?あれ、ハンサちゃんじゃない!?
"ユウリさまー!"
小さな鳥の正体はアセナと共に行動していたはずのハンサちゃんだった。
ハンサちゃんがわたしの肩に止まる。
"アセナさまにユウリさまのもとにむかうようにいわれてきました。ユウリさまアセナさまをたすけてください!"
良かった。無事だったんだね。
うんうん、アセナはもちろん助けるよ。
ところでハンサちゃん、そちらの大きな鳥さんはどなたかな?
"おかあさんです!"
"母です。"
うわっ!しゃべった!
"娘がいつもお世話になっております。"
え?!あ、いえ、こちらこそお世話になっております。
"娘から話しは伺っております。僭越ながらわたくしがアセナ様の元までお運びさせていただきます。"
ほわい?
"さぁ、背中にお乗りくださいませ。"
わたしたちは顔を見合わせる。
あの、こちらは1人乗りになりますか?
"4人乗りになります。"
あ、以外と乗れるんですね。
緊急会議の結果、わたしと緑木さん、シルバくんとフェルくんが乗ることになり、レオくんとガルくんは日の出を待ってサクヤさんと一緒に馬車で首都に向かうことになった。
馬車組にアイテムボックスの荷物を分けると、わたしはシルバくんに、緑木さんはフェルくんに紐でくくりつけられてハンサママの背に乗り首都へ向かい空へと飛び立った。