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出発してから1週間。
わたしたちは共和国最後の町に到着していた。
この強行軍でわたしは今更ながらお馬様の凄さを実感していた。
前々から体力あるなぁとは思っていたが、この世界の馬はわたしの知っている馬の何倍も力持ちで、スピードはあまりないがそれを補うだけの体力お化けだった。
だってこの1週間ずっと走りっぱなしで、お馬様からしたら超ブラックな労働環境だろうとなと思ったら、レオくんいわく。
「この馬は3日3晩くらい余裕でぶっ続けで走れますし、重量も今の3倍くらいまでならいけますよ。」
っていうのだからシ○アもビックリだ。
そしてこの1週間。
御者が出来ないわたしと緑木さんは荷台でずっと一緒だったので色々と話すことができた。
まず召喚されたときの状況だが、コンビニでコーヒーを買おうとしていたら光に包まれて気づけば帝国だったそうだ。
どうやらそのコンビニに英雄たちが偶然にも集合していたとか。
ちなみにそのコンビニはわたしの家の隣にある。
っていうか、召喚のきっかけがコンビニってどうなのよ。
「僕もそう思います。その後は咲来さんもご存知の通り帝国でお世話になるんですが…」
そもそもそのお世話になるきっかけも自分たちの意思じゃなかったってわけね。
「そうなんです。その頃の記憶はもやがかかったようにハッキリしないのですが、3ヶ月くらい前からだんだんもやが晴れていったんです。」
それで帝国に居てもろくなことにならないと一人を除いて気付いたと。
「操られているフリをしながら脱出する機会を伺っていたんです。そんな時タイミング良く教国に行くことになって少し問題が起こるだろうからその間には3人には帝国を抜けてもらうことになっていました。」
問題が起こることは確定事項だったわけか。
「まぁ、実際彼は問題を起こしてくれましたから。」
それはいい笑顔で言うことじゃないよ。
で、途中までは良かったけど問題が発生したわけだ。
「本当ならどさくさに紛れて僕たちも教国で姿を消して逃げるつもりだったんですが…」
英雄くんが裏切った。ってところかな。
「はい。咲来さんと別れたあと彼が目を覚ましたあとにやられました。多分気絶させたことが気に入らなかったんでしょう。」
あー、なんか無駄にプライド高そうだったもんね。
そんでなんやかんやあって今に至るわけだ。
ちなみに帝国にいる間ってなにしたの?
「主に戦闘訓練ですね。こっちの意思がないことをいいことに能力を調べていつでも実践が出来るように訓練をさせられついました。お陰で人を気絶されられるようになったんですけど。」
コワッ。だからそれいい笑顔で言うことじゃないからね!
じゃ、魔法も使えたりする?
「僕の場合は風魔法が使えますね。」
ん?一つだけ?
「僕達英雄がそれぞれ使える魔法は一つです。ただスキルレベルはMAXです。」
なるほど、一つに特化してるわけか。
わたし英雄さんたちのこと結構うろ覚えなんだけど、メンバー構成ってどないなってます?
「そうですね。まず年は36才で僕が一番上で、あとは順番に29才,22,才17,才11才となってます。」
ちょっと待って、11才!?
いや、カーザで見たときに随分と小さい子がいるなとは思ったけど、マジで!?
「マジです。とても物分かりのいい子でどっかのアホの方がよっぽど手を焼きましたよ。」
本音がダダ漏れだね。
年長者じゃ、さぞ苦労したでしょう。
「ええ、それは、もう…」
あまりにも憔悴した表情になる緑木さんに、わたしはそれ以上聞くことが出来なかった。