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死んでまうやろがいっ!
そう叫ぶと同時にわたしは目を覚ました。
目の前にはビックリしている皆と未だ気絶していると思われる英雄さんがわたしの隣で寝ていた。
どうやら気を失っていたのは短い間だったようだ。
「突然気を失われたので驚きましたが、すぐ気がついて良かった。」
皆は安堵していた。
安堵してるところ悪いんだけど、わたしを失神させた犯人はこの中にいます。
わたしの言葉に皆の視線がレオくんに注がれる。
そうか、犯人はお前か。
「え?締め上げ?え?!えーっ!!す、すみませんでした!」
当のレオくんとしては本当にわたしを締め上げていたとは気がついていなかったようで泣きそうな顔で必死に謝ってくれた。
レオくん、君を許す!
と言うか、結果的にレオくんがたまたま締め上げてくれちゃっただけで、わたしとしてはいきなり止めに入ってきた全員同罪だからねと言いなが英雄さんの服に手を伸ばすと、またもや皆に止められた。
何故止める。
「お言葉ですが、意識のない男性の服を脱がすのをお止めするのは当たり前のことかと。」
シルバくんよ、そんな人を変態みたいな目で見るのは止めてくれるかな。みんなもね。
わたしだって好きでやってる訳じゃないのよ。
「「「「・・・」」」」
わたしの言葉に皆はアイコンタクトを交わすと疑いつつ、しぶしぶ解放してくれた。
くっ、全然信用されてない。
心は折れる寸前というか若干折れていたが、それでも挫けることなく英雄さんの服を脱がすとそれは現れた。
それは、人の形をしたひび割れた水晶がついたペンダントであった。
・・・やっぱり。
前に怪しげな地下室の夢で見たときと同じだ。
あの時ぶん殴ったのに比べれば水晶の大きさはずいぶん小さくなってるけど。
これは、あの時水晶の一部かもしれない。
と言うことは、同じようなものがまだ存在する可能性あるわけか…
わたしがあれこれ考えていると、おかしなことをしないかと見張っていたであろう皆の空気が張りつめていた。
もしかして、これがなにか知っているの?
「いえ。何かは分かりかねますが、それが良くないものであることだけは分かります。」
わたしはひび割れた水晶にてを伸ばすが、腕を捕まれて止められた。
いや、だから何故止めるのよ。
「ですから、良くないものだと言ったそばから触ろうとすればお止めするのは当たり前だと思いますが。」
うむ。確かに普通はそうであろう。
でもこのまま英雄さんが身に付けたままにしておけないじゃんよ。
「確かにそうかもしれませんが、ユウリ様に何かあったらどうするおつもりですか。」
心配してくれてありがとう。
でもね、わたし…
腕が変な方向に曲がらないかそっちの方がよっぽど不安なんだけど。
ちょっと痛いのは気のせいかな?
「っ!」
無意識に力が入っていたことに気づいたようで、シルバくんがハッとして、手を離す。
チャーンスッ!!!
シルバくんが手を離した瞬間に、わたしは水晶を掴んだ。
わたしが掴むと同時に水晶は粉々になり、真っ白な灰に変わってしまった。
え?わたしそんなに握力ありませんけど?
「ユウリ様!何をしたんですか!?」
いや、別になにも。ちょっと触ったら急に…
えっと、ごめんないさい?
「何故触るなと言ったそばから、触るのですか?その耳はやはり飾りなのですね。それならもいでも問題ありませんね。」
いやいや、飾りじゃないし…
あ、痛っ!やめて!もがないでー!
水晶が灰に変わると同時に英雄さんは目を覚ましたが、目に飛び込んできたのは耳を引っ張られ説教を受けているユウリの姿だった。
目を覚ましたこには誰も気づいていない。
英雄さんはなんとなく見てはいけないものを見てしまったと思い再びまぶたを閉じたのだった。