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「っ!なぜそんなことがわかるんだっ!?
適当なことを言って誤魔化そうとしてんじゃないのかっ!」
まぁ、普通はそう思うわな。
わたしだったら信じられないもん。
「バカにしているのかっ!?」
あーもー、落ち着いて。
なんだか話が全然進みやしない。
教国で会ったときは冷静だったのにどうしちまったんだか…
いいからお聞き!
英雄たちは帝国を抜けてすでにカーザに入ったと思われる。
「だからなぜそんなことがわかるっ!」
夢で見たから。
あのギラギラした目はテッペンを目指す呪いが発動している証拠だと思う。
わたしも少し極妻になったからほぼ間違いない。
「テッペン?極妻?ふざけるのはやめろっ!そんなこと誰が信じるんだ!力を貸すつもりがないなら最初からそう言ったらどうなんだ!」
だんだんと興奮する英雄さん。
「英雄様、落ちいてください。」
「うるさい!黙ってろ!」
ドンッ!
なだめようと近づいたシルバくんを英雄さんが突き飛ばした。
ガシッ。
「シルバさん、大丈夫ですか?」
「レオ…ありがとう。大丈夫だ。」
突き飛ばされたシルバくんはレオくんが抱き止めてくれたおかけでなんとか壁への激突は免れたが、わたしの血管のぶちギレは免れなかった。
おい。うちのシルバくんになんちゅことしてくれとんじゃ、ワレェェェ!!!
大体さっきからその俺が頭を下げてまでお願いしたんだから力を貸すのは当たり前だ!みたいな態度がが気に入らないんじゃぁ!ボケェ!
「僕がいつそんな態度をしたっていうんだ!?」
現在進行形でしてるんだよ。
無意識ですか、コノヤロー。
そもそも、あんたの話には矛盾が多すぎるんだよ。
自分だけ先に帝国を抜け出してどうやって他の英雄と合流するつもりだったのさ。
しかも帝国からずいぶんと離れた共和国にいて。
「それは君たちが共和国にいるからだ!」
教国で会ったときとパッと見は変わらないが、さっきから言動に違和感しか感じないんだよ。
それに英雄さんが来てからなんかザワザワしてて落ち着かないしな。
これは何かあると思ったわたしは一か八かでありったけの力を込めて英雄さんに『ヒール』をおみまいした。
すると英雄さんの胸元から黒い煙が出てきて、ものすごい勢いでわたしに向かってくる。
「「「「ユウリ様っ!」」」」
騒然となる周りとは裏腹にわたしは冷静だった。
あたい、これ知ってる。
いつぞやの夢の中と同じならこれで解決するはず。
わたしが向かってくる黒い煙をペチンとはたく。
すると触れた場所だけ消えた。
あれ?前は一発で全部消えたのに、なんでやっ!?
予想外の出来事にわたしは必死に手を左右に振り、煙がすべて消えるまでペシペシする。
結果的に煙はすべて消えてなくなった。
あっぶな。油断禁物や。
念のためペシペシした手に『クリーン』と『ヒール』をかけて煙の発生源である英雄さんはを見れば床に倒れていた。
すぐに様子を確認すれば気を失っているだけのようだ。
気を失っているなら好都合。
わたしは英雄さんの服を剥いだ。
「ユウリ様、何をしているんですか!?」
突然のことに顔を真っ青にして壁にへばりついていた皆が止めに入ってくる。
何って、ぐえ、ちょ、誰だ!?
後ろから腕をまわしているやつは!
首が絞まってるからっ!
わたしの首を締めている腕を必死にタップするが、腕の力は弱まるどころかさらに締め上げてくる。
だんだんと目の前が白みはじめて、わたしはバタンキューした。