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モフン!ドンッ!
痛っ!今ので絶対お尻が割れた!
部屋を出てすぐ、わたしはモフモフしたものにぶつかって思いっきり尻をうちつけ悶絶する。
痛むお尻をさすりながらモフモフの正体を確かめれば、目の前には本来のビックサイズに戻ったアセナさんがいた。
未だに痛むお尻に動けないでいると後ろから足音が。
しかし、前にはビックサイズになったことによりわたしの行く手を完全に塞いでいるアセナさん。
どうしよう?こうしよう!
わたしはダメもとでアセナさんによじ登った。
しかし焦りからかうまく登れずモタモタしていると、足を掴まれた。
ギァァァァッ!!!
わたしの断末魔の叫びが共和国の空に響き渡った。
ひゅん。ガシッ!
叫んぶと同時に手を離すという失態をおかしアセナさんから落っこちたわたしをフェルくんがキャッチ。
おそるおそる目を開ければ、いい笑顔のシルバくんの顔が目の前に。
「アセナを待機させておいて正解でした。」
・・・なん、だと。
まさかわたしの逃亡まで全てお見通しだったとでもいうのか…
シルバくん、なんて恐ろしい子!
わたしは白目をむきながら、降りようとするがフェルくんは全く下ろしてくれる気配がない。
いやいや、自分で歩けるからね。
抱っこされたままとか恥ずかし過ぎるから下ろしてくれるかなとお願いするわたしにフェルくんはフルフルと首をふる。
「ダメ。下ろしたらまたどこかにいこうとする。」
そう言って部屋に向かって歩き出してしまう。
イヤー、ヤメテー!オロシテー!
もうわたしにできることは手で顔を覆うしかなかった。
抱えかれたまま部屋に入ると皆の視線を感じる。
死ぬ。恥ずか死ぬ。
ようやく、椅子に下ろされたわたしは突き刺さる視線に耐えきれず開き直った。
もう、逃げられないならとことんつきあってやろうじゃないか!
意気込むわたしの出鼻を挫くように英雄さんが話しかけてくる。
「話す前に一ついいですか?」
ど、どうぞ。
「君は手紙を読んでいないのかな?」
手紙?
「聖女様からの手紙です。」
・・・あー!
ちょっとゴタゴタしててまだ読んでないですね。
「はぁ…話は手紙を読んでからにしましょう。」
ため息をついた英雄さんに手紙を今すぐ読むように促される。
戸惑うわたしに読めばわかると言う英雄さん。
これ以上はなにも言うつもりはないようでだんまりを決め込んでしまってので、わたしは聖女様からの手紙を読むことにした。
手紙の内容はわたしたちが旅立った後の教国について書かれていてた。
聖母様方や女の子の日々の生活、Xさんや美女さんの様子や、どうでもいい黒服のことなどなど、ほっこりしながら読み進めていると、最後に衝撃の文言が。
"追伸、英雄さんからの伝言です。
ユウリ様にお願いしたいことがあるので近々尋ねられるとのことです。"
と書かれていた。
なぜわたしはすぐに手紙を読まなかったのか。
まさに後に悔いると書いて後悔をした。
わたしは自分の失態を誤魔化すためゲ○ドウポーズをとり、話を聞こうと言って英雄さんを見た。
英雄さんは相変わらず胡散臭い笑顔で話し始める。
「実は教国で一緒にいた英雄くん以外はみんな帝国にいてはろくなことにならないと気づいて逃げ出すことになってね。
僕は上手く脱出することができたんだけど、帝国から出るのは容易じゃなくて。
そこで君に僕以外の英雄たちが無事に帝国から脱出できように力を貸して欲しいんだ。」
英雄さんからのお願いに対してゲン○ウポーズのままわたしが出した答えは…
帝国からの脱出には手を貸せない
だった。
「っ!なぜだっ!?」
何だかんだ言っても力を貸してもらえると思っていたのだろう、納得いかないといった様子で詰め寄ってきた英雄さんを手で制す。
まぁ待ちたまえ、君は勘違いをしてる。
わたしは帝国からの脱出『には』と言ったんだ。
力を貸さないとは言っていない。
「しかしっ…」
もう、せっかちさんだなぁ。
脱出に手を貸せない理由、それは…
英雄たちはすでに帝国から脱出しているからだよ。