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ぶえっくしょんっ。
わたしは自分の盛大なくしゃみで目が覚めた。
部屋を見渡せばアセナさんとハンサちゃんの姿はなく明るい。
寝起きでぼーっとしていると、バタバタと誰かが走っている音がした。
いくら倉庫と言えど、室内を走るなんてけしからんやつもいるもんだと考えていると、
バンッ!
「姉御!」
突然わたし専用の簡易部屋のドアが勢い良く開かれガルくんが現れた。
うん。走っていたのはお前か。
あとね、いくら成人前のお子さまでもレディの部屋の扉をノックもなしに勝手に開けるのはどうかとわたしは思うわけだよ。
「っ!」
わたしの忠告にカッと真っ赤になったガルくんは今度は勢い良く扉を閉めた。
うん。ういやつじゃ。
しかし、勢い良く開けたり閉めたりしたら扉壊れちゃうからもう少し優しくしたげて。
ドンドンドンッ!
おい、優しくって言ったそばからそんなに強くノックするやつがいるかコノヤロウ。
ドンドンドンッ!
どうやらガルくんは全然話を聞いてないようだ。
このままでは扉が壊されかねないと思ったので仕方なく大きな声でどうぞと言うと、また扉が開いた。
しかしそこにいたのはガルくんではなくて、
いつぞやの胡散臭い英雄さんだった。
ギャーーーッ!!!
驚きのあまり全力で叫んだ。
英雄さんの脇から見えたガルくんがあちゃーとなっていた。
その後、ニイナさんやロミジュリやら色んな人がわたしの叫び声を聞いて集まってしまい、なんやかんやあって英雄さんはロープでぐるぐる巻きにされて転がっていた。
口にも布が巻かれておりしゃべることもできない状況なのだが、英雄さんの目を見たわたしにはハッキリと彼の言いたいことがわかった。
『おい、この状況をはやくなんとかしろや。』
・・・あ、はい。
すぐになんとかしまーす。
英雄さんの本気の目に今はおちゃめを封印して、集まった人たちに事情を説明する。
なんか寝ぼけてたみたいで…お騒がせしました。
その結果。
ほとんどの人は解散して英雄さんとマイパーティーメンバーだけとなり、わたしは現在進行形で正座をさせられている。
なんでこうなった、解せん。
「ユウリ様が失礼いたしました。」
「いえ。すぐに解放されましたし大丈夫です。」
しかもいつの間にか解放された英雄さんと皆がわたしを完全に無視しながら話を進めている。
うん。揉めるより全然いいんだけどね。
何がどうなってこうなったのか、誰かわたしにも分かるように説明をしてくれてもいいんでない?
「あ、あの。俺まだ姉御になんにも話してないっす…」
流石にこの状況に罪悪感を感じたのか、ガルくんが恐る恐るといった様子で皆に報告する。
皆の視線がわたしに注がれたのちに、ガルくんにいく。
ガルくんがうなずくと、そういうことは早く言ってくださいよーと言って椅子に誘導された。
驚きの手のひら返しだな、おい。
言ってくださいもなにも問答無用で正座さておいてからに。
で、ちゃんと説明してくれるんだろうな。
英雄さんよ。
わたしの一言に今度は英雄さんに視線が集まる。
やれやれといった様子でわたしの前まで来た英雄さんはいきなり頭を下げる。
「お願いです。力を貸してください。」
いやいや、急になによ。
とりあえず、頭をあげてよ。
「お力を貸していただけるまであげません。」
と言って頭をあげる様子がない。
皆を見れば我関せずで目も合わせてくれない。
わたしは仕方なく分かりました、力を貸すから顔をあげてくださいと言ってしまった。
「ありがとうございます!」
わたしの言葉に英雄さんは笑顔でお礼を言うと何事もなかったように頭をあげて、皆が良かったですねと英雄さんを囲む。
・・・・・
なんかよう分からんが、嵌められたことだけは分かる。
わたしは怒りでカッとなったが、これは良くない状況だと瞬時に判断して文句は言わずにダッシュで部屋から逃げたした。
皆がグルで嵌めてくるなんて絶対ろくなことじゃないなき決まってるじゃんよ!