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王女様がバックについたのでロミジュリたちは確かにもう大丈夫だろうが、問題は親御さんよね。
出来れば前に進もうとしている若人には関わらせたくない。
うんうん唸って悩んでいると、
「ご安心ください。」
と耳元で囁かれた。
うわぁっ!ビックリしたなあ、誰よ、もう!
驚きのあまりその場で飛び上がり、心臓はもうばっくんばっくんである。
わたしに心停止一歩手前の驚きの囁きをプレゼントしてくれたのは女王様の使用人さんだった。
「親御様にはこちらでお住まいなどをご用意致しますので心配ございません。」
それは何処かと聞こうとしたけど、使用人さんの知らない方がいいぞオーラを感知。
全部お任せしますっ!
と言ってわたしは使用人さんからスススと距離を取ってみんなのもとへ逃げた。
なにあの人、なんかチョーヤベー。
鳥肌がたつ腕を擦りながらみんなのもとに行けば、シルバさんに耳を引っ張られた。
ぼ、暴力反対!
「ついてるだけで役に立たない耳は、もげても困らないのではありませんか?」
あれ、皆さん。
かなりお怒りでらっしやる?
「おや。何故私達が怒っているのか全くわからないといったご様子ですね?」
えっ!いや、分かってるよ!
ものすごーく、反省してる!ごめんなさい!
「そんな口先だけの反省が通用するとでも思っているのですか?だいたい、いきなり前に出たと思えば武器を持ってる人間に突っ込んで・・・」
ロミジュリたちが止めに入るまで、説教は延々と続いた。
ねぇ、痛すぎて感覚がないんだけど、わたしの耳まだついてるよね?もげてないよね!?
ワサワサニギニギ。
良かった、。耳、ついてたぁ(涙)
耳の無事も確認できたので、わたしたちはニイナさんのお店に帰ることにした。
ここにいても、もう出来ることはなさそうだしね。
ちなみにわたしがぶっ壊した扉の修理は王女様の方でやっていただけることになりました。
本当に何から何まで申し訳ございません。
よろしくお願いします!
これからのことなどまだ話すことがあるという皆さんに別れを告げ、外に出ればまだ昼過ぎだった。
体感的にはもう夜中でもおかしくないくらい濃かったんだけどな。
ヘロヘロになって店に戻れば疲労がついに限界突破したようで、わたしはお昼ごはんも食べずにアセナさんとハンサちゃんが占領するベッドにダイブして、至福のモフモフを存分に感じながら眠りについた。
久しぶりに夢を見た。
それは何かから必死に逃げている様子のフードを目深に被った怪しげな3人組だった。
3人組は街道ではなく木がうっそうと茂る獣道を進み、しきりに周りを気にしていた。
極度の緊張感が続いているからだろうか。
時折フードから覗く目はギラギラとしていた。
良く見れば小さな傷がいくつかみえる。
重い足取りではあるが止まることなく歩き続ける3人組は川のそばのひらけた場所に辿り着いた。
3人は念入りに周囲を確認してから川に近寄るとフードを取って水を飲んだり、顔を洗っていた。
そしてフードを取ったことによって現れた顔は…
教国で会わなかった3人の英雄たちであった。
かなり疲弊してはいるが、生きている!
わたしは英雄たちに向けて『ヒール』をかける。
どうやら大きな怪我は無かったようだが、突然傷が治ったことに驚く3人を見届けていると視界がどんどん暗くなっていく。
もう時間切れかよ。
姿が見えなくなっていくなっていく3人に向かってわたしは叫んだ。
必ず助けたるから、諦めんと気張りやっ!
叫び終わると同時にわたしの視界は真っ暗になった…