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奴隷商店を出て、まずは服屋に向かうことにした。
2人の服はボロボロなので、店を出た瞬間から通りすがりの人たちの注目の的になってしまった。
魔法で傷は治せても、服までは直せないので仕方ない。
ただ、注目を集める理由はボロボロの服だけでなく彼らが人族ではないということもあるようだ。
どうやらこの街では少々偏見があるようで…
元々最初の目的地であった服屋に着くと早速中に入る。
「いらっしゃい。あら!随分といい男が来たもんだ。ゆっくり見ていってちょうだいな。」
色々不安がなかったわけではないが、服屋の店主はおばちゃんでイケメンならなんでもオッケーなおおらかな人だった。
ちょっとささくれていた心が救われた気がした。
「ちょいと、みんな!いい男が2人も来たわよ!」
「あんたのいい男は信用できないからね。若けりゃなんでもいいんだからさ。」
「そうそう、どれあたしが本当にいい男か確認してやろう。」
「あたしたちのお眼鏡にかなういい男はそうそういないからね。」
「そんじゃそこらの男じゃ、あたらを満足させられないってもんよ。」
おばちゃんはイケメンに目を輝かせると、店の奥から仲間のおばちゃんたちを召喚した。明らかに店員ではない。
「「「「あら!本当にいい男じゃない!」」」」
仲間のおばちゃんたちも2人の姿をみるとわっと群がった。
さながら一昔前の○ン様が来日したときの様子を思い出す。
これ、伝わるかな…
おばちゃんたちは、終始キャッキャウフフして2人に色々薦めていた。
気持ちは分からんでもないがもう少し私にも興味を持ってほしいなぁと思ったり、思わなかったり。
2人は私が軽く無視されていることと、おばちゃんたちのパワーにおされてどうしていいか分からない様子だ。
「ちょ、お嬢さん方私たちは大丈夫ですから。」
「そんなに着れない。」
「あらやだ!こんなおばちゃんをお嬢さんだなんて。」
「お世辞がお上手ね。」
「ねぇ、この服もどうかしら。」
「あら、こっちもいいんじゃない?」
「はぁ、いい目の保養だわ。」
もみくちゃにされて流石に可哀想になったので、おばちゃんたちにそろそろ勘弁してあげてくださいとお願いする。
「「「「「仕方ないわね。」」」」」
名残惜しそうにしてはいるが、おばちゃんたちはちゃんと解放してくれた。
2人にはおばちゃんたちチョイスの服の中から選んでもらうことにして、私も自分の服を選ぶことにする。
流石に選んでくれたもの以外を選択するのはね。
まぁ、イケメンはなに着ても似合から問題ないだろう。
私は色々と物色した結果、旅をすることを考えてシャツとズボン、カバンと部屋着と下着を何点か購入することにした。
そろそろ2人も選び終わっただろうと確認すると、まだ選んでいなかった。
数が多過ぎて選べなかったのかなと思ったのだが
「ご主人様に選んでいただきたくて。」
コクン。
自分の好きなものを選べばいいのに。
後で文句言われても受け付けないからね。
「ご主人様が選んでくださったものならなんでも大丈夫です。」
「問題ない。」
・・・そうですか。
こんな風に接される事がないのでどうしていいか分からなくなったが、とりあえず今はスルー。
とりあえず、今着ている服と似たようなものを選んでおく。
服を選びながらおばちゃんたちにこれから旅をすることを話すと、タオルやら外套やらが必要だと言って薦めてくれる。
なんだかんだ買ってお会計は金貨2枚となった。2人は自分の分は払うと言ってくれたけど、頑として私が払った。
これからイヤってほどお世話になるんだから、これくらいはしないとね。
お店で服を着替えさせてもらい、他にも旅に必要なあれこれが買えるオススメのお店まで教えてもらった。
何人かのおばちゃんがオススメ店の話のあと急いで店から出ていくのを見て、こりゃ、この後またお会いすることになるなと確信する。
「いい男ならいつでも歓迎だよ。また来ておくれ!」
どの世界でもおばちゃんは最強だなと思いました。