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とりあえずマダムが叫び声を上げたことでわたし達がコロコロされたわけではないことは分かってもらえたようで、乱闘は完全に停止。
使用人の人たちが倒れたマダムを連れて全員部屋から出ていってしまった。
残された部屋でわたしは頭を抱えた。
この部屋の修理もお子さんたちにお願いすればなんとかなる?なんとかなったとして修理が完了するまでどれだけの時間がかかるかな?
考えるだけでわたしは恐怖で震えが止まらなかった。
ちなみにわたしだけでなくみんなも震えていた。
しかし神は我々を見放さなかった。
「せんぱい、ここは私に任せてください。」
声の主はゆみちゃんだった。
いや、気持ちは嬉しいけ、ど…
ガラガラガラ
わたしたちの目の前には信じられない光景が広がっていた。
なんと破壊された部屋が、まるで巻き戻しのように元に戻っていくではありませんか。
あまりにも非現実的な光景にみんな開いた口が塞がらない。
わたしたちがアホ面を晒している間もどんどん巻き戻されて、1分もかからないうちに部屋は元の素敵な姿に戻ったのだった。
えーと、ありがとうございます?
っていうか、なんでゆみちゃんがここに?
だって、南の大陸にいるんじゃなかった?
疑問がどんどんわき出てきて止まらない。
「話せば長くなるんですけど、わたし本当はこの世界の魔法の神様なんです。」
うん。ちょっとなに言ってるのかわからないですね。
だって神様じゃなくて魔王だって聞いてましたけど?
「そうなんです。色々あって今はそういうことになってるんですけど、どこから話しましょうか?うーん。あ!まずはせんぱいと出会ったところからお話しさせていただきますね。あれは…」
ストップ!待って!
わたし今ものすごくテンパってるから、色々話されても理解出来る気が全くしないんですけど。
何故わたしとの出会いから!?
聞きたいのはそこじゃないから!
「そうですか?重要なことだと思うんですけど…」
ごめんね。でもそこはそんなに重要なことじゃないから。
みんなも重要だとか頷いてるんじゃないよ。
全然重要じゃないわ。
そうだ。
ここはわたしから一つ一つ質問させもらうかたちでもいいかな?
「もちろんです。何でも聞いてください!」
ニコニコと笑顔でわたしのお願いを聞いてくれるゆみちゃんに最初にした質問は…
なんか元の世界の時とキャラちがくない?
だった。
シーーーン。
辺りを静寂が包む。
かなりの間をおいてからのゆみちゃんの回答は、
「えっと、あちらでは小悪魔ギャルっていうキャラ設定だったので、こちらが本当の私になります?」
だった。
うわぁ、でたよ。
どっかの神様と同じで設定とか言っちゃったよこの子。
トントン
ドン引きしているわたしの肩を誰かがたたいた。
振り向けばわたしの肩に手を置いているシルバくんとその後ろには目が死んでるみんながいた。
「ユウリ様…」
ん?どうした?
「そのご質問は今しなくてはならないものなのでしょうか?」
バッキャロー!当たり前じゃないか!
いいかい、ゆみちゃんはまずわたしのことをいつも"せぇんぱぁい"って呼んでたの。
それからですますで話さないし、何よりこんなに清楚な出で立ちじゃくてケバケバだったんだから!
他にも、え、なに、もういいって?
いやいや、まだまだこんなもんじゃないのよ。
わたしがいかに今ゆみちゃんとわたしの知ってるゆみちゃんが違うかを力説していると、もういいと止められた。
そっちから聞いてきたのになぜ止められなければならんのだ。
全くもって解せん。
しかしシルバくんが静かにわたしの後ろのほうを指さすので、そちらを見てみればゆみちゃんが床に顔を押し付けて倒れていた。
魔法の使いすぎで倒れたのかと慌てて駆け寄ればか細い声で
「もうこれ以上は勘弁してください。」
と言われた。
なんのことかと最初はわからなかったけど、今のゆみちゃんの状況に以前みんなに褒め称えられたときの自分が重なった。
そして自分の犯した恐ろしい行いに気づくと、ゆみちゃんにの横に同じように顔を押し付けて謝罪した。
ゆみちゃん!ごめんなさいっ!
なんか、最近謝ってばっかりですな…




