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町を出発しから数日。
村をひとつ経由して次の町に到着した。
ここの宿屋も全く同じ方法でぼったくりを持ちかけられており、やはり唆した人物には分からずじまいだった。
以前約束した通り、部屋を2つゲットしてシルバくんとフェルくんとアセナには留守番をお願いして、レオくんとガルくんと一緒にブラックシャドウを訪ねることにした。
指示された場所には一軒の家。
わたしは少し緊張しながらドアをノックする。
また、あんなのが現れたらどうしよう。
しかし、開かれたドアの先にいたのはナイスミドルなおじ様だった。
想像していた人物像とはずいぶんと違うイケオジの登場にわたしは間違えましたと言ってドアを閉めてその場を去ろうとする。
「おや、お間違えではありませんよ。さあ、中へどうぞ。」
とイケオジに家の中へと案内された。
そして通されたのはめっちゃお洒落な家具の置かれた洗練された素敵な部屋だった。
「ユウリ様、キョロキョロし過ぎです。はしたないですよ」
あまりにも挙動不審だったのかレオくんに注意を受ける。
シルバくんならまだしも、まさかレオくんに注意される日が来るなんて…
わたしは凹んだ。それはもうベッコベッコに凹んだ。
注意したレオくんもまさかわたしがそんなにベッコベッコに凹むと思わなかったようで、シルバくんなら絶対にしないであろうフォローを必死にしてくる。
「あの、ユウリ様のことを思ってですね、えと、その、すみません。」
うん、でもそのフォローが辛い…
ベッコベッコに凹むわたしにアワアワしているレオくん、我関せずで部屋に通されてからずっとどこを見ているかわからないガルくん。
そんなカオスな空間が展開されている部屋にお茶を持って現れたイケオジはなんとなく察してくれたようで、
「女性には優しくしないといけませんよ。」
と言ってレオくんにウインクしながらお茶を配ってくれた。
・・・なんなんだ、このイケオジは!
惚れてまうやろがいっ!
ぽーっとなるわたしに、勉強になります的な感じでキラキラした目でイケオジを見るレオくん、そして何故か腕を必死にさすりながら震えているガルくん。
そんな新たなカオス空間でもイケオジは動じなかった。
わたしたちが話が出来る状態に戻ってくるまで素敵な笑顔で待ってくれてから定期報告を開始してくださいましたよ。
大人だ。ここに真の大人がいる!
その後なんとか我に帰ったわたしたちは色々話を聞いて宿に戻った。
その帰路でわたしたちに会話はなかった。
宿に到着して部屋に入ったわたしたちは、今までのだんまりが嘘のように一斉に話し出した。
イケオジ!イケオジがいた!
「大人です!理想の大人がいました!」
「ようやく帰ってこれた!オレ、オレ、うわーん!」
「そんなに一度に話しかけないでもらえますか。」
シルバくんに怒られた。
ここに大人なイケオジは居ないという現実を突き付けられたわたしとレオくんはベッコベッコに凹み、ガルくんは安堵していた。
ちょいちょい気になってたけどガルくんのその反応おかしくない?
「オレ、ああいう物腰の柔らかなヤツは生理的に受け付けられないんです。」
なるほど!がルくんはイケオジみたいなタイプは苦手だったわけかぁ。
「・・・」
納得しているとどこからともなく無言の圧力を感じる。
発生源はもちろんシルバさんだった。
何故だろう、ついさっき似たような状況があったはずなのに今は恐怖しかないんですけど。
我に帰ったわたしたちは下を向いたまま、自主的に正座して無言を貫いた。
そして、ここに真の大人は存在しないという現実を大人しく受け入れるのだった。
「で、どのようなお話をされたのですか。ご報告をお願いします。」
静かになったわたしたちにシルバくんが話すように促してくださったので、ようやく情報を共有することになりました。
今回の定期報告では、ついにガルくんの故郷のカーザ連合国で温泉宿と闘技場の建設が始まったことが報告された。
宿は少し時間がかかるそうだが、まずは温泉だけでも稼働することになったそうでそっちはすぐにでも開始できるところまで進んでいるとのこと。
また、ゼロスさんからの伝言もあった。
素晴らしい話をありがとうございます。
温泉宿はお任せください!
本当に心強いお言葉です。
ありがたや、ありがたや。
闘技場の方もブラックシャドウの方で着々と建設が進んでいて、今後の運営方法については現在精査中なので近々相談させてほしいとのことだった。
ぶっちゃけ運営なんて分からないから相談されても困るとなぁと思ったりしなくもない。
ま、聞くだけ聞いて、はいはいと言っておけば大丈夫だろう。
さて、本題の依頼していていたぼったくりを唆した人物と共和国の事故の経緯などだけど。
初めに言っておく。
わたしの予想よりアホなことが起こっていました。
いい?心をしっかりと持って聞くように。
じゃないといろんな意味で折れちゃうからね!