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「~~~!」
何だか近くで声が聞こえる。
なにやら言い争っているようで、声が大きい。
こちとら疲れていて、もっと寝ていたいのに迷惑なんですけど。
あまりにもうるさいので、体勢を変えようとしたがベッドにしては何だか固いし、安定感がない。
どうなっているのか確認しようと身体を起こすと目の前にイケメンがいた。
うわぁーーーっ!
あまりの近さに自分でもビックリするほど大きな声で叫んでしまった。
ゲホッ、ゴホッ、オエッ。
叫んだ結果むせた。盛大にむせた。
そんなゲホゴホしている私の背中をイケメンがさすってくれる。顔を見た瞬間に叫ぶという大変失礼なことをしたにも関わらずに、だ。
イケメンな上に優しいとか最高かよ。
どこのどなたか存じませんが、すみません、ありがとうございます。
ただ距離が近過ぎて、落ち着かないのでちょっとでいいから離れて欲しいんですけど。
ハッ!
いやいや寝起きでイケメンパニックを起こしてる場合じゃない。
状況を把握しようと、回りを見渡してみるとアリサちゃんとお父さんが少し離れたところで明らかに困っていた。
そして、私の側には2人のイケメン。
普通の人より耳が長くて先がとんがっている顔を見た瞬間に叫んでしまった美少年系イケメンと、背中をさすってくれている垂れたイヌ耳が頭にくっついているリアルワンコ系のイケメンの2人。ちょっと服はボロボロで全体的に薄汚れているけど。
うん。どういう状況なのか全く分からない。
とりあえず、ワンコイケメンにお礼を言ってさりげなく距離をとる。色々と眩しくてわたしの目が潰れちゃうからね。
契約したはずのズタボロの2人が見当たらないので、意識を失った後のことをアリサちゃんとお父さんに尋ねる。
「寄るなっ!」
説明をしようと近寄って来たお父さんを美少年系イケメンが威嚇した。
おうおう、どうした。
急に大きな声だしたらビックリするでしょうよ。
とりあえず、大きな声を出した美少年イケメンに落ち着くように言って、ビビりまくっているお父さんに私のほうから近寄って話を聞く。
なんか、すいません。
どういう状況なのか全く分からないんですが、ご説明お願いできますかね?
「あ、はい。そこの2人に触れたとたん動かれなくなって、何かあったのかと近寄ろうとしましたら、急に寄るなと言われてしまいまして。」
「あなたのような信用できないものを近づけるわけがないでしょう。」
「・・・」
「あの、その、終始このような形でして…」
なるほど。とりあえず話が進まないので、美少年イケメンには丁重に少しの間お黙りくださいとお願いする。
あと、後ろで無言で威圧しているワンコイケメンにもお止めくださいとお願いして気を取り直して、お父さんの話を聞いた。
で、聞いた結果。
今、目の前にいるイケメンが契約したズタボロの2人だそうです。
・・・マジか。
いや、確かに言われてみればボロボロの服はなんとなく見覚えがあるような気がしなくもないけど、だとしても変わりすぎではなかろうか。
そういえばうつ伏せで倒れてたから顔は見えなかったね。
とりあえず怪我自体は治っているようなので、無事に魔法が効いて良かったとこっそり安堵する。
ちなみに、再度話を聞いてる間のイケメンたちは大人しかった。どうやら、私に注意されたことを気にしているらしい。
え、なにそれ。かわいいんですけど!
だけど、怪我を治すためとはいえ本人の意思も確認せず奴隷契約した私の方こそごめんなさいですよ。
シュンとしていたが今度は何だか感動している風のイケメンたちは放っておいて、お父さんと話を続ける。
結果的に気を失っていたのは5分程で、お父さんたちが近づこうとすると、イケメンたちが先ほどのように威嚇してくるもんだから近寄れずどうしたもんかと途方にくれていたとのこと。
随分ご迷惑とご心配をお掛けしたようだ。
いくらカッとなったとはいえ、もう少し考えて行動するべきだったと反省する。
ご迷惑をお掛けしたことを謝れば、
「こちらこそ興奮していたとはいえ不用意な発言をして申し訳ありませんとありませんでした。しかしあそこまで酷い怪我を一瞬で治せるほどの上級白魔法が使えるなんて…すごい、すごいですよ!」
と謝られ、褒められた。
おい、お父さん。
反省したそばから興奮しないで、恐怖がよみがえっちゃうから。
別に隠すことでもないかなと思って、使ったのは『ヒール』だと言うとビックリされた。
何故かイケメンたちもビックリしてた。
おやおや?
これは言わない方がよかったかも…?