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新しい国に突入です。
教国を出発してから10日。
いまだかつてないほど、平和な旅が続いていた。
まぁ町に入る時は相変わらずだし、森を走れば魔獣も出たけど、それでも平和だった。
そしてわたし達は現在教国最後の村で夕飯の真っ最中。
いよいよ次の国だけど次はなんて国なのかな?
わたしが全く地図を読んでいないことは重々承知だろうに、シルバくんはやれやれとため息をついた。
ちょっとムッとしたけど、平和な旅路によって心にゆとりのあるわたしは突っ掛かったりしない。
ご説明お願い致します。
「・・・」
シルバくんは怪訝な顔でわたしを見てから、みんなになにやらコソコソと話しかけている。
どうせ失礼なことを言ってるんだろうけど気にしないもんね。
というか、毎回気にしてたらキリがないし。
みんなはそんなわたしの様子を確認すると、とりあえず説明をする事にしたようで地図を広げた。
「次の国はスペルマシーネ共和国と申しまして、魔法と職人の国です。広さはカーザより大きくレティサラより小さいと言ったところでしょうか。」
ふーん。
「現在スペルマシーネ共和国は魔法派と職人派が対立している聞いております。」
えー!共和国なのに全然共和してないのかよ。
それならもういっそのこと別々の国にしちゃえばいいのに。って言うか、魔法派と職人派ってなに?
「簡単に説明しますと、魔法を魔石に吹き込めるのが魔法派。
武器から日用品まで色々と作製するのが職人派です。」
なんで全然やってること違うのに何故一緒の国にしたかというと、以前は協力して魔道具なんかを開発して製作してたそうなのだがお互いの代表が代わってから急に仲が悪くなったとか。
かぁー!なんでみんなでなか良くできないかね!
たださ。その代替わりを境に揉め始めたとか、そこに嫌な予感しかないのはわたしだけ?
わたしのこの嫌な予感は5日後的中することになる。
最後の村を出てから3日後に共和国に突入し、さらに2日後の共和国最初の村で事件は起きた。
到着した村には掘っ立て小屋はなんと一戸しかなく、その村唯一の小屋では現在進行形で逢い引きの真っ最中だったからだ。
幸いなことにワァーオな展開になってはいないのだが気まずい。ものすごく気まずい!
だってボロボロの掘っ立て小屋での会話は基本的に筒抜けですからね。
「ジュリアン、私心配だわ。あの人たちここまでやって来るかもしれないわ。」
「大丈夫さ、ロミーナ。まさかこんなボロボロの小屋に僕たちがいるなんて思いもしないさ。」
えー、現在進行形でこの共和国ではロミジュリ的なことが起きているようです。
話を聞くに、どうやら2人は逢い引き中ではなく何かに追われていて小屋に隠れていると。
巻き込まれるたら面倒だなと思い移動しようとしたら、どこぞの世紀末から来たのかというような集団とバッタリ出会ってしまった。
「ヒャッハー!お前ら誰だ?もしかしてあいつらの仲間か!」
いえ、関係ありません。
「嘘つけ!こんな辺鄙なところにたまたま居合わせるなんて偶然あるわけないだろう!」
その偶然が起きてここにいるだけでして…
「おい!まとめてやっちまうぞ!」
「「「おーっ!!」」」
・
・
・
「「「お、覚えてろよー!」」」
結果から言うと、一瞬で返り討ちにしました。
「ユウリ様、追わなくてもよろしいので?」
別にいいんじゃない?面倒くさいし。
「おいっ!なんの騒ぎだ!?」
「ジュリアン、危険よ!」
世紀末ヒャッハーたちが去ったあとに小屋から出てきたお2人。
「お前ら新手だな!僕たちが魔法派と職人派の代表の子どもだと知って襲うつもりかっ!?」
おー…ロミジュリって揉めてるはずの魔法派と職人派の代表の子どもなのかーい!
「ジュリアン。ここはお父様たちにご報告した方が…」
・・・
えー、バカなのー。
駆け落ちしておいて自ら戻るとか。ないわー。
あとこのまま飛び出したら、せっかく返り討ちにしたどこぞの世紀末ヒャッハーと出会っちゃうじゃない。
仕方ないので丁重に村にお戻りいただく。
「どうやら、お前らは僕たちを襲うつもりがないようだな。」
一度も襲ってやるなんて言ってませんやん。
で、なんやかんやで色々とお話しをしてみれば、お2人とも温室育ちのお花畑思考の持ち主でもんでもなくラブラブであることが発覚。
途中何度口から砂を吐いたことか…
何故こうなったのかわからないが、
わたしたちはお2人の用心棒として共和国の首都に向かうことになりました!
別に用心棒のお給金が破格だったからとかじゃないんだからね!