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創造神降臨から5日。
町は少しずつ落ち着きを取り戻していた。
降臨騒ぎの翌日には新たな教皇により教会を一新することが発表され、開かれた教会としての歩みが始まった。
しばらくは大変だと思うけど、あのおじいちゃん、おばあちゃん達なら大丈夫だろうて。
ちなみに演説する新教皇様の隣には3人の聖女様方もいらっしゃった。
なんでそんな事知ってるのかって?
全部見てたからですよ。
あの日、わたしは教会から脱走したあと町を出るべくシイナさんのお店に向い現在も滞在中だったりする。
現在シルバくん、フェルくん、レオくんに続きガルくんも何やらイケメンに仕立てあげられてお店で働いていて、わたしはシイナさんとお店のデザイナーさんたちに囲まれていた。
いやぁ、町を出ようと思ったんだけど全く準備ができてなくて、もう一晩お世話になることになったまではよかったんだけどね。
その際寝間着として使用している召喚されたときに着ていたスウェットでふらついていたところをシイナさんに見つかり、詳しく見せて欲しいと言って拉致られまして。
「ユウリ様、そのお召し物をよく見させてくださいませ!」
この世界、まだゴムの利用はあまりされていないようでかなり興味深かったようです。
でも、いきなり脱がすのはやめて欲しい。
何度も言うが、わたしのポロリなんて誰得だってんだ。
その後他にも何かないかとものすごい勢いで問い詰められて、何故かチャイナ服なんかを書いてみたのだが…
わたし画伯なのよね。テヘペロ
結局書いただけでは分からないことが多くて色々口で説明をする羽目になったのだが、これが大変。
チャイナ服なんて見たことはあっても作ったことなんかないから、あれこれ聞かれても分からなくて、実際に服を作ってみることになってしまった…
そんなこんなでわたしが拘束されたことによって、他のみんなもあれよあれよと連れていかれ働くことになり現在に至るわけだ。
「最近新しいアイデアがなくて行き詰まっていたので、助かりました!で、他にはありませんか?ありますよね?」
「もう、こんなデザインみたことないわ!あなた絵はあれだけどすごいわね。他にはないの?あるわよね?」
そう言うシイナさんとおネエなデザイナーさんの目は血走ってた。
えーっと、その、そろそろ出発したいなぁなんて。
別に怖いとか思ってないし、みんなからのいつ出発するのかとせっつかれたわけでもないですよ。ハハッ…
勇気を出してシイナさんに言えば、ご不満ではあったが仕方ないという事でオッケー頂きました。
くっ、もっと早く言えば良かった。
という訳で、明日には出発するぞ野郎共!
出発の朝。
準備万端で馬車に乗り込む。
お店の人たちが見送りのために集まってくれた。
代表してシイナさんから贈り物をいただいた。
なかを見れば服や食べ物があり、さらにお給金までいただいてしまった。
何から何までありがとうございます。
お金、大変助かります。
どうやらイケメン4人は相当頑張ってくれたようで売り上げが良かったそうな。
正しくはおば様方に揉みくちゃにされてたとかされてなかったとか。
贈り物のなかには分厚い紙の束とペンも入っていた。
もしかしてこれって…
「なにかアイデアがあればそこに書いて置いてくださいね!」
予想は的中。
服のデザインを書く用ですね。
まぁ、あんなに簡単に解放されるわけないですよね…ですよね…精一杯頑張らせていただきます…はい。
お店の皆さんにお礼を言ってまた来ますと約束をして出発する。
門をくぐり抜けようとしたときだった。
空から何が降りてきた。
それは、背中の羽をはばたかせた3人の聖女様方だった。
ありゃ、鳥族は秘密だと思って言わなかったのに。
地面に着地する同時に女の子がわたしに向かって突進してくる。
受け止めれば、ポコポコと叩かれた。
あいたたた。
ちょっ、マジで痛いんですけど。
ストップ、ストップ!
「ジャンヌ、めっ!ですよ。」
女の子のポコポコ攻撃を止めたくれてのは聖女様方。
あ、ありがとうございます。助かりました。
あの名前…
「はい。ユウリ様がご提案してくださった名前です。」
「とっても気に入ったようで。」
そっか。気に入ってくれたか。良かった。
「ユウリ様。」
ん?どした?
「「この度は、ありがとうございました。」」
あー、いやー。
あれもこれもわたしが勝手にしたことなんでお礼を言われちゃうと困っちゃうなぁ。
でも、そんなこと言ったらわたし以上にみんな困っちゃうから今回は素直にお礼の言葉を受け取らせていただくよ。
腰にへばりついている女の子、ジャンヌを抱っこして声をかける。
まだ言葉の意味はからないだうけど、小さな手をとり指切りをしてまた会いに来るから約束だよと伝える。
不思議そうな顔のあと、何となく意味がわかったようで
「あい!」
と返事をしてちょっと涙が見えるけど笑顔で抱きついてくれた。
微笑ましく見守る聖女様方。
わたしとしては、この光景を見ることができただけで大満足なんだよね。
だから本当にお礼なんかいらないわけですよ!
もう一度力一杯抱きしめてからジャンヌを地面をおろす。
これが最後じゃない。
また、会いに来るから。
その時はたくさんお話ししよう。
わたしも溢れそうになる涙を堪えながら笑顔で馬車に乗り込むと、波乱しかなかったレティサラ教国をあとにしたのだった。
ちなみにみんなを守れるようにと始めた筋トレはまったくもって出来なかった。
なぜできんのだ、解せん!
ようやく教国から旅立てました。