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まずは『エリアヒール』でみんなの怪我を治さないとね。
千切っては投げた兵士たちも未だに転がってるし。
いつもだったらMPが底をついて倒れるハズだけど、なんかいけそうな気がする。
一瞬聖母補正という言葉が頭をよぎったが慌てて打ち消す。
本人が認めてないんだから、ないない。
さて気を取り直しまして。痛いの痛いの飛んでけぇ。
あ、結構な広範囲で発動した気がする…
わたしたちはもちろん、広場で転がっていた兵士もちゃんと傷が治ったようです起き上がっている人もちらほら。
そして、色んなところから立ち上る黒い煙。
ねぇ、あれって呪い的なやつじゃ…
よく見りゃ教皇からも黒い煙が立ち上っている。
ちょ、どんだけー!
と叫ぶと、腕の中の女の子が動いた。
目をこすり顔を上げればわたしと目が合う。
傷はキレイに治っているようでホッとする。
声が届かないことは分かっているけど、わたしは小さな勇者さんにありがとうとお礼を伝える。
すると、どうしたことか。
「あう、あう」
女の子の口から声が。
それはお世辞にも言葉とは言いがいものだったけど、確かに女の子の声だった。
ケビンの言葉がよみがえる。
"あ、そうそう。神様って降臨すると奇跡が起きちゃうんですよね。"
わたしは空に向かってサムズアップしてから女の子を力一杯抱きしめた。
ケビンよ、確かに奇跡起きた!
しかも、最高の奇跡が!
女の子も音が聞こえること、声が出せることに気づいたようで、何度も耳を塞いだり色んな声を出しては喜んでいた。
つきっきりであれこれしたいところだけどあちこちから視線を感じる。
・・・分かってますよ。
ちゃんとみなさんからの報告とか色々聞きますからね。
まずは聖女様方だけど、2人とも涙を流しながら抱き合い再会を喜んでいた。
べっぴんさんは会ったことがあるけど、もう一人は夢で会った少女だよね。
わたし幽体離脱でもしたのかしら…?
隠密組の報告によれば牢で鎖に繋がれかなり衰弱していたそうだが、包帯などが巻かれているわりにはこれといった外傷はなかったとこと。
やっぱり、幽体離脱したのかも。
とりあえず、お疲れ様でした。
到着したら神様がいてビックリしたでしょ。
3人は首がもげるんじゃないかと思うくらい激しく頷いたあと、質問攻めを仕掛けてくる。
うん、落ち着こうか。
そんないっぺんに話しかけられても分からんのですよ。
質問は後でちゃんと聞くから。
次はミーナさんとガルくん。
2人は物凄く凹んでいた。
まぁ、女の子とお留守番をお願いしてたのに1人でここまで来ちゃったからね。
どうやら2人が少々揉めているその隙をついて女の子は脱走したようだ。
女の子的には、みんなどこ行ったのか探しに出たといったところだろうけど。
2人が凹みすぎて女の子が不安になっちゃってるから、反省は後でにしようや。
それで教皇様だけど気絶してるから放置。
最後は陽動組だけど随分とご立腹の様子。
「ユウリ様」
分かってる、斬られたことでしょ。
言ってなかったもんね。
「聞いてない」
でも、斬られるときに若干後ろにね
「そういうことじゃないです」
はい。すみません。
「創造神様が降臨されることも聞いておりませんが」
そりゃ、最終手段で呼ぶかどうか
「「「・・・」」」
はい。すみません。
って、いやいや、ちょっと待って。
今回わたしが仕切るってはじめに言ったよね。
なんでこんなに責められてんの?
"予想外のことが起こりすぎじゃ。もっと事前に詳細を教えてもらいたかったのじゃ。"
そんなん、知らんがな!だいたい…
クイクイ
一触即発の中の突如服を引っ張られた。
引っ張った張本人である女の子を見ると、しかめっ面で耳を塞いでうるさいアピール。
あー。聞こえるようになったばっかりなのにごめんなさい。
ほら、みんなもちゃんと謝って!
「「「ごめんなさい。」」」
みんなでごめんなさいをすれば、女の子がわたしの頭を突然いい子いい子してくる。
ぶわっ!
うん、泣いたよね。
色んな思いが溢れて泣いた。
本当は任せろとか言ったけど全然自信なんかなかっし。
わたしの我が儘でみんなを巻き込むことになったから、怪我させるつもりなかったのにボロボロになっちゃっうし。
でも、ちゃんと聖女様は救出できたし。
女の子は音が聞こえるようになって、話せるようになったし。
そして、誰もかけることなくこの場にいることが何よりも嬉しかった。
わたしちょっと甘く考えてた。
みんなは強いし、わたしには『ヒール』があるからなんとかなるって。
わたしみんなを守れるように強くなるよ。
まずは筋トレから始めるぞ!
100話を越えたら、ブックマークも100を越えました。
しかも、評価までいただきまして本当にありがとうございます。
これからも頑張りやす!