表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつのまにやら聖母様  作者: 芍薬百合子ぼたん鍋
101/210

101

眩い光が広場を覆う。


あまりの眩しさに誰もが目を閉じ目を覆った。


しばらくすると光が収まり、目を開けるとそこには信じられない光景が広がっていた。


広場の創造神像と同じ姿をした光輝く人物が今まさに地に降り立とうとしていたのだ。


その人物が誰なのか、広場にいたすべてのものは本能的に理解しその場にひれ伏した。





創造神降臨。





過去にも降臨したと史実に残ってはいるが、こんなに大勢がいる場所に降臨することは極めて稀なことだった。


創造神が口を開く。


"皆のもの面を上げよ。"


しかし、教皇に囚われている聖女以外に頭を上げるものはいなかった。


・・・


"やっぱり声までは無理でしたかぁ。

あ、ユウリさん安心してください。

こんなこともあろうかと、ちゃんと手はうってあるんで。"


うん。なんかすごく神々しい感じだったけどいつものケビンでした。


何をするのかと黙ってみていれば、ケビンはわたしの横でひれ伏す女の子の頭に手を触れようとした。


ペシッ!


おい、なにしてんねん。触んなや。


"いや、あの、接触してないと上手くいかなくてですね、すぐ終わるんでそんな犯罪者を見るような目で見ないで下さいよ。"


何がなんでも阻止したいが、ケビン召喚には制限があるので仕方なく黙っておく。

黙ってる分視線くらい我慢しいや。


"分かりましたよ。本当に時間もないことですし、早速始めますね。"


ケビンが女の子の頭に手を置くと、女の子の口から成人男性の声で面を上げよと発せられた。


え、キモ。

どういう原理なのさ。

女の子に害はないんだよね。


しかし、これによりみんなに声が届くようになったようで皆が顔を上げる。


まさか姿を見れただけでなく、声まで聞くことができるとは的な感じでみんな感激している。


え、みんなケビンやで。

わたしと周りとの温度差が激しすぎてよくわからんが不安になるんですけど。


"最近の教会は私への信仰心を利用して良からぬことばかりしているようですね。しかも私と我が愛すべき子らの橋渡しが出来る聖女までも利用しようとは残念なことです。"


この爆弾発言によりみんなの視線が教皇へ向かう。


「そ、そんな馬鹿な…、う、嘘だ、嘘だ…」


流石に創造神が登場することは予想外だったようで、教皇はめっちゃ狼狽えていた。


えぇ、そこは堂々としててよ。

急に小者感が半端ないんですけど。


しかし、テンパった教皇はここで最悪の選択をした。


「これは全てペテンだっ!教会を、私を貶めようとする魔族の罠だっ!こんなもの創造神などではないっ!」


と言い出したのだ。


おいおい。流石にこの状況でそれはないわ。

ここは大人しくごめんなさいしておきなって。


チラッとケビンの様子を見ると、いい笑顔だった。


・・・こりゃ、激おこですわ。


"随分自信があるようだな。しかし神を欺こうとは嘆かわしい。裁きを受けるがよい!"



ゴロゴロ…

ドッガーン!


晴れていたはずの空から突然雷鳴が轟いたかと思えば、教皇の近くに落ちた。


"まだ申し開きがあれば申してみよ!"


もう、やめて。無理よ!

教皇のライフはゼロよ。

口から泡が出てるわ。


あり得ない状況に成り行きを見守っていた市民たちも恐れおののいていた。


いい感じだけどそろそろ限界が近い。


ざわめく人々にケビンは語りかける。


"我が愛すべき子らよ。己の曇りなき眼で真実を見極めよ。私ははこの世界に生きる全ての幸せを願っている。"


創造神モード全開で締めに入るケビン。

ぷくく。普段とあまりに違いすぎるので可笑しくて笑いをこらえるのが辛い。


"愚か者については私の代弁者でたる聖母に一任する。愛すべき子らに幸あれ!"


一斉に皆がひれ伏した。


直後女の子が倒れ込んできたので受け止める。


このまま消えるかと思いきや、わたしだけに聞こえるようにケビンが話しかけてくる。


"いやぁ、これで正真正銘の聖母になりましたね。"


おい、お前やりおったな。

この前思いついたいいことってこれだな。おい!


"ええ、そうです。いやぁ、これでやりたい放題ですよ。やりましたね!"


何が"やりましたね!"だよ。

しかもいい笑顔でサムズアップしなかながらとかイラッとしかせんわ。


"聖母についてはまた今度説明します。じゃ、あとはお願いします。"


あ、こら待て、帰るなアホ!


"あ、そうそう。神様って降臨するとなぜか奇跡が起きちゃうんですよね。"


シカトか、ええ度胸やないかワレェ!


"今回の奇跡はなんだろなぁ。楽しみだなぁ。じゃ、また教会で。さようなら。"


来たときと同じようにまばゆい光が広場を覆う。


目を瞑り次に開いた時にはそこにケビンの姿はなかった。


色んな意味で力が抜けて、その場に座り込む。


・・・ふふふ、ケビンよ。

お前は重大なミスをおかしたぞ。


あの言い方では聖母が誰だかイマイチ分からないというミスをな!

ここは、聖母じゃなく聖女ってことで全力で誤魔化す!


お前の思い通りになんかさせるもんか。バカめっ!

絶対、聖母なんか認めないからな!


たが、次に会ったときは二度とろくなことを考えられないうにお話をしてあげるから覚悟しとけ!



まさかの創造神降臨で大騒ぎとなる広場をボーッと見渡せば、皆がこちらに向かってくるのが見えた。


無事作戦は成功してようで隠密組と囚われていた聖女様が、そして陽動組によってグルグル巻きに縛られた教皇と鎖のほどかれた聖女様の姿も見える。


さらに人混みを掻き分けてこちらに向かってくるのはミーナさんとガルくんだ。


わたしの腕の中で眠る女の子に視線を落とす。


半分以上のメンバーがボロボロだが、誰一人かけることなく集まれたことに安堵する。




さて、みんな集まったことですし最後の仕上げといきますかね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ