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ある日の休日

作者: akumunotumugite

窓から外の喧騒がかすかに聞こえる。もはや習慣と化した夜更かしのせいか、重たい瞼を無理やり開けてみると、何もない天井が眼に映る。あまりの白さに見続けるとゲシュタルト崩壊しそうな勢いだ。


「暇だ・・・。」


そう、大学生は暇なのである。土日ですら暇だし、何なら夏休みなんてただの地獄だ。

平日はバイトや勉強に追われ、休日はサークル活動や仲の良い友達と旅行に行ったりする。そんな虫の良い話はラノベやアニメにしかないのである。

高校の定期試験で勉強しない奴は大学でも勉強しないし、友達と出かけたりしない奴は大学でもぼっちだし、空から女の子が降って来たりなんてこともない。

18にもなって性格が急にそんな変わりますかっつー話。てか、大学入った所で何にも変わりません。

結局は、そいつの努力次第なのである。

というありきたりなことを考えながらスマホをふと見ると、時刻はもう12時をまわったところ。


「メシでも食うか。」


何度目か分からない独り言を呟きながら、万年床から体を起こす。足の踏み場もないリビングを抜けて、洗面台へ向かう。YouTubeのプレイリストで音楽を流しつつ、歯磨きをして服を着替える。この一連の動作はただの習慣だ。

参考書や漫画が乱雑に置かれた机から財布を掘り当てると、イヤホンをして玄関へ。


そういえば、人の人生の大半は習慣で決まるとどこかで聞いた。人の時間から睡眠と習慣を除いたら、思ったよりも少ない。

ことさら、18年しか生きていない僕なんて、何もしてこなかったに等しいんだろう。事実、僕は高校時代に勉強とPCゲームしかしてこなかった人間だ。


「人生は何事もなさぬにはあまりにも長いが、 何事かをなすにはあまりにも短い。」


確かにそうだろう。

だが、無作為に過ごす日々もまたどれだけ甘美なことか。自由な時間とは得難いものだ。何かに追われている現代人なら、誰でも分かってくれるだろう。


僕たちの人生で記憶に残ることなど、睡眠でも、繰り返される習慣でもないはずだ。


「さて、今日は何をしようか。」

ゆっくりと、確かにドアノブを開ける。


この、休日の、玄関を開ける瞬間が僕の最も好きな瞬間であることは疑いようもない。

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