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魔族の女の子に種付け生活! から二十年後の話

見切り発車です。

次回はあんまり期待しないでください。

 少し昔の話です。

 魔界を支配していたのは、魔王と魔王族を名乗る黒魔族でした。

 赤魔族、青魔族、緑魔族、白魔族を従えて、長く繁栄してしました。


 ですが、若い黒魔族の新しい魔王は、とても横暴で傲慢でした。

 最初は従っていた四つの魔族も反発し、戦争になってしまいました。


 すべての魔族は、数がおおむね一緒でした。

 四対一で、勝負になるわけがありません。

 黒魔族は思ったよりあっさり滅亡しました。


 元々魔王に従っていた四天王とされる各魔族の代表は、今後は分割で統治しようという話をしました。

 ですが、四つの国に分かれても戦争になってはどうしようもありません。

 そこで、四人とも女だった代表は考えました。全員が同じ男と子をなせば、次の世代は全員強大になる。

 兄弟同士なら争うこともないだろう。そう思った四人の代表は異界から男を召喚しました。



 この物語は、それから二十年(・・・)以上後の話です



「飽きた」


 四十を超えて年相応に老けた男、(あずま)神馬(じんめ)

 やたら豪華な服を着こんで、とんでもなく立派なお庭で優雅にティータイムをしている彼は、とんでもなく退屈そうにそういった。


「贅沢で何不自由が無くて、何一つ義務が無くて時々すげえ美人のお嬢さんと種付けする生活に飽きた」


 異世界の日本という国からの魔界に召喚された彼は、何一つトラブルが無い人生を送っていた。

 なにか面倒なイベントが起きるわけもなく、ただ四人の代表と子作りするばかりだった。

 四人とも関係は良好、生まれた子供はみんな健康。

 何一つつらいことも苦しいこともなく、悲しいことも嫌なこともない。

 だが、飽きた。

 いくら何でも、飽きる。当たり前だった。


「っていうか、悲しい。俺の人生が悲しすぎる……」


 高校生の時に召喚され、種付けだけしていればいいのよと言われて生活して、実際にそれしかしてこなかった。


「高校中退で、種付けだけしてもう四十歳……悲しすぎるだろう、こんな人生!」


「親父、その結果である俺たち息子にそんなこと言うなよ……」

「父上、その発想が出るのが遅すぎるかと」

「父ちゃん、俺はその生活がすげー羨ましいだけど……」

「あの、父さん、僕らと遊ぶのが嫌なの?」


「とにかく、このままだと俺の墓には種付けだけの人生を送った男って刻まされるんだよ! 流石にそれだけは嫌だろう! それだけ(・・)ってのは嫌なんだよ! ぺらっぺらだろう、俺の人生! 同人エロゲーの主人公だって、もうちょっと深みがあるだろうが!」


 普段は各々の母親の領地で暮らし、わざわざ集まってもらった四人の息子に中年は叫ぶ。

 この自堕落な生活に飽き飽きしたと、絶叫していた。


「気づいたらもう四十だぞ?! 流石にもう種付けもきついし、っていうかもう子供要らないし! 俺もうやることないし!」


「っていうか、親父は種馬としては優秀だよな。一人一人に四、五人産ませてるし」

「確かに、お役御免という認識は正しいかと」

「楽じゃん、もう遊んで暮らせるじゃん」

「そ、そんなことないよ。父さんはみんなが大事に思ってるよ」


「このままちょっと気を抜いたら、五十とか六十だぞ。孫の顔だってそろそろ見ることになるんだぞ! 孫にまで『お仕事は?』『子づくりだよ』とか答えたくない……! 俺だって若いころをは苦労したんだぞとか語りたい……!」


 特に人生経験を重ねることなく、ただ老いただけだと気づいた神馬は大慌てだった。

 やることやって子作りする仕事、しかも相手は人間ではないとはいえ美人ぞろい。

 それをやっている間は楽しくても、加齢には逆らえないし、そもそも一生それだけしているわけにもいかない。

 というか、それしかしていない人生というのは余りにもむなしい。

 もう孫も見れる年齢なのに、種付けしかしてない。虚無だった。


「こんな抜きゲーのエロシーンしかない人生なんて嫌だ!」


「だからなんだよ」

「先に要点を言ってください。思っていることをそのまま話しても何も伝わってきません」

「いいじゃん、そのまんま何にもしない人生で」

「気持ちはわかるよ、いやだよね、そんな人生」


「求ム、エロ以外! 異世界に召喚されたのに、エロだけしてるなんてもったいないだろ!」


 何をしたいのか、具体性が一切ない当たり人生の薄さがうかがえる。

 何かしたいけど、具体的に何をしたいのか伝えられない。

 一つはっきりしていることは、エロはもういいということだった。


「何がもったいないのかはわからねえが……確かに種付けももう終わりだしな。体が動くうちに何かしたいのはわかるぜ」


 長男、赤魔族代表ペルシュロン・レトッドの息子、ヒュウガ・レトッド。

 母親似で筋骨隆々の大男。額から四角睡の角が一本生えている、濃い赤の肌をした彼は父親のうっ憤に理解を示していた。


「最初に論旨を言っていただきたいですね。トカラは暇だとしても、我らも暇ではないので主催者として円滑な進行を願います」


 二男、青魔族代表クライズデール・ブールの息子、カイ・ブール。

 母親似で長身かつ細身。後頭部から回り込むように二本の丸い角が生えている、濃い青の肌をした彼は、父親の無計画さにあきれていた。

 

「カイ兄ちゃん、それはちょっとなしだぜ?! なんで俺だけ暇だってわかるんだよ! 確かに暇だけども!」


 三男、緑魔族代表フリージア・グリンの息子、トカラ・グリン。

 父親にで特徴のない顔をしている普通の体格をしている男。左右のこめかみから上に向かって枝別れしている角が生えている、深い緑の彼は次兄の暴言に抗議している。


「父さん、もうちょっと何がしたいのかを言ってくれたら、僕らも力になれると思うな」


 四男、白魔族代表ハクニー・ホワトの息子、ノト・ホワト。

 母親に似て可憐な容姿をしている幼さの残る少年。側頭部の左右に渦を巻いた太い角が生えている、輝かんばかりに白い肌をした彼は父親に整理するようにお願いしていた。


「このままじゃあ老後を迎えられない……わかるだろう?!」


「いや、だからなんだよ」

「結論が決まっているのなら、同意を求めないでください」

「カイ兄ちゃん、俺に反応してくれ!」

「トカラ兄さん、黙ってた方がいいよ」


「冒険したい……でも俺は何もできない……だから、お前たちに頼みたい! 一緒に冒険しようぜ!」


 力はない、若さもない、だからどっちもある息子にそれを任せて、安全圏から刺激だけを感じたい!


 自分がどれだけ恥ずかしいことを言っているのか自覚しているのか怪しい彼は、それでも自分の息子たちに恥ずかしい要望を手順悪く伝えていた。

 なんでも元気よく言えばいいものではないだろうに。


「最初からそう言えよ、それぐらいなら飽きるまで付き合ってやるぜ」

「全くです。それぐらいならまあ、親孝行と思いましょう。兄上もノトも私も力になりますよ」

「カイ兄ちゃん、俺は?! 俺はどうなんだよ!」

「トカラ兄さん……もうやめようよ!」


「お前たち……なんて頼もしいんだ……俺の金玉から出てきたとは思えないぐらいできた息子だ……トカラ以外」


 感動でむせび泣く四十台の男。

 なんにもできないから全部息子任せにしている彼は、息子たちの頼もしさに泣くしかなかった。


「だから! なんで父ちゃんも俺はカウントしてないんだよ! っていうか父ちゃん、それならなんで俺も呼んだんだよ!」


 唯一の父似のトカラの抗議は、弟であるノトにしか届かなかった。


「だって、トカラ兄さんは……特に褒めるところもないと思うし……」

「ノト、お前までそんなこというのかよ!」

「じゃあトカラ兄さんは、なにか自慢できることある?」

「……ないな」

「だよね」

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