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クリスへ。


クリスへ。



 手紙、ありがとう。メイド長が雨の中、クリスがずぶ濡れになって震える手で手紙を持って来たと聞いた時、心臓が止まるかと思ったわ。息も凍るような真冬の雨の夜に、傘も差さないでずっと立ってるだなんて、ありえない。いつも通り、郵便配達で送ってくれて良かったのに。でも、手紙は嬉しかった。ありがとう。一生大事にするわ。


 私は見栄っ張りだから、クリスには弱い所は見せられなかったの。だってクリスがいつも頑張ってるの知っていたから。そんなクリスに、弱音を吐くだなんて、絶対にできなかった。でも。私もつらくて。ブルームさんはね、少しだけお父さんに似てるの。例えば、笑った時にだけ見える八重歯、例えば、本を読んでいる時に背表紙を指で軽く叩く癖。だからかな。なんだか死んだお父さんに「泣いても良いんだよ」って言われた気分になったの。


 クリスは知らないだろうけど、ブルームさんには私と同い年の妹さんが居たんだって。でも……五年前に、首都で子供を中心に高熱が出る病気が流行ったでしょう?その時に、妹さんが亡くなってしまったそうよ。でね、妹さんと私の髪の色と瞳の色が、似ているんだって。だからブルームさんは私を亡くなってしまった妹さんのように可愛がってくれたの。クリスが誤解してしまったような、関係じゃないのよ。私とブルームさんはお互いに、死んでしまった人を相手に重ねていたの。愛は感じているけれど、それは、恋愛の愛じゃないわ。家族に対する愛なのよ。この関係を、認めてほしいとは言わない。でも、理解はしてほしい。世の中には、こういう関係も有るのだと。


 ねぇクリス。私もクリスに会いたい。でも、私たちって一緒に居ても良いのかしら?

私はどうしたってクリスに弱い所なんて見せられないし、クリスだってそうでしょう?お互いに見栄と意地を張ってばっかり。


 クリスは見た目も悪くないし、頭だって良い。家は町で一番の農家だし、おじさんやおばさんも良い人。クリスと結婚したいって子は山ほど居るわ。わざわざ、私なんかを選ぶ理由は無いじゃない。ねぇ、なのになんで私なの?私とクリスの間にも、愛はあると思ってる。でも、その愛って、本当に恋愛の愛なの?あまりに長い間近くに居すぎて、親愛と混合しているってことは無いかしら?

クリス。あなたのことは大好きよ。ねぇ、友達のままじゃ駄目なの?きっと私たち、ずっと友達で居られると思うの。それじゃ、駄目なの?いつか別れてしまう恋人なんて関係よりも、ずっと仲良くしていられる友達じゃ、駄目なの?



   アーシャより。



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