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7/10

よ〜〜く考えてみようー3

「とりあえずは朝ごはんかな……」

アランに部屋から出ないよう身振り手振りで説明し、買い出しに出掛けた。

アランはうんうんと頷いていたので、近くのコンビニくらいならダッシュで行けば大丈夫だろう。

紙パックのジュースと、菓子パンや惣菜パンをいくつか買って、大急ぎで部屋に戻った。


帰って来ると アランはずっとテレビを見ていたようで、特に問題を起こしてはいなくて一安心した。

買って来たパンとジュースで朝ごはんを済ませ、これから一体どうしたものかと思案した。

その横でアランはストローに興味を持ち、ストローの穴から覗き込んだり、息を吹き込んで吹き矢のようにしてみたりしていた。


コンコンコンコン


誰かが玄関ドアをノックする音が聞こえた。

僕は慌てて、ドアの方とアランを交互に見て、とりあえず身振り手振りで「静かにしてくれ」とアランに伝えた。


コンコンコンコン


僕は息を潜めながらドアスコープから外の様子を覗き込んだ。

そこにはあの珍妙な隣人が立っていた。向こうもドアスコープを覗き込んでいたので、頭でっかちの深海魚に見つめられているような気持ちになった。


コンコンコンコン


「おはようございまぁ〜す!お隣のガッくんでーす♡」


ヤバい!

いや、別にやましい事はしていないのだが、どうしよう?

アランの方を見ると、今度はコンビニの袋に興味を持っている。カサカサ言わせたり、頭に被ってみたりしていた。


コンコンコンコン


コンコンコンコン



帰ってくれそうにないので、再びアランに静かにするようジェスチャーで伝え、ドアをそーーっと開けた。


「あー、やっぱりいたー!コータン、おはよ〜う☆」


僕はいったい いつから「コータン」になったのだろうか?全く身に覚えがないのだが。


「お引越しのお片付けのお手伝いしようと思って〜。わぁ〜!ダンボールがいっぱ〜い!おじゃましま〜〜す!」

「わわっ!あっ、あの、ちょっと!」

焦る僕を押しのけて、珍妙な隣人は内股でそそくさと歩きながら部屋の中へと入って行ってしまった。


「あら?」


さっそくアランを見つけられてしまった。

何故かアランは頷いている。

天井を仰ぐ僕を、隣人……ガッくんは振り向いて腕を掴み、体を引き寄せてアランに背を向け、小声で話し掛けてきた。


「……あのイケメンさん、もしかしてコータンの……?」

「…………?」


何を言われてるのか全然わからなかった。続けて耳元で囁くように、

「彼氏の事、みんなにはナイショにしといた方がイイ?」

と言われて、そこでやっとガッくんの言っている事が何を意味しているのかが理解出来た。

「へ?え?やっ!あっ!ちっ、違う!違う違う違う‼︎アランとはそんなんじゃなくて!」

思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

「あら〜、『アラン』って言うの?あのイケメンさん! そうよねぇ〜、ザ・日本人、ってお顔じゃないものねぇ。で、どちらのお国のお方なのかしら?」

「えっ⁈」


困った……‼︎


まさか異世界のどこか知らない国から来たみたいとか言っても信じないだろうし、信じられないだろうし、僕ですら 今でも何が起こっているのか正直わかっていないし……。


「あの、えっと、その……」

しどろもどろになっていると、ガッくんがアランの側に行って話し掛けていた。


「Hello!Bonjour!Buon giorno!Ciao!Hola!Guten tag!Привет!ん〜っと、あとは……」

「ちょっ、ちょっ!えぇ⁈ 何?何?何語?」

途中からさっぱりだった。


「Jambo!」

『Jambo!』


アランがオウム返しの返事をした。何故か両腕を掲げて飛び跳ね、満面の笑みで挨拶を返していた。


「あら?見た目の割に随分とワイルドなお国なのねぇ?」

何故かまたアランが頷いている。

「あ、あの、ガッ……くん、ワイルドな国って?」

「あ〜、ヒスワリ語の挨拶が通じたみたいだったから、ケニアとかタンザニアとかなのかなぁ〜って」

「ヒスワリ?あ〜、えっと、話をすればややこしくて長くなるんだけど……」

どうしたものかと悩み過ぎて、頭がパニックになった。


「あっ!わかった!」

急にガッくんが手をポンっと叩いて大声を出したのでまさかと思って冷や汗が出た。

(ひぃっ!バレた?アランが異世界人だってバレた???)

「きっとお父様のお仕事の都合で、世界中を駆け回ってたのね。お父様は外交官か何かかしら?だからヒスワリ語圏にも滞在して言葉を覚えたのね、きっと。さっきは ボクが立て続けに挨拶したもんだから返事がしにくかったのよね?きっと『Jambo』だけ後から言ったから答えてくれたのよね☆ 何ヶ国語くらい話せるのかしら?」

ああ、帰国子女のガッくんは 都合よく勘違いをしてくれているようだ。

「そっ、そうそう!アランはいろんな国に行ってたんで、言葉が混ざっちゃって(笑)だからちょっと口下手というか、無口というか、そのぉ……。あ!あの!今、日本語を勉強中で!ウチにホームステイというか……」

苦し紛れの嘘が口をついて出て来てしまったが、かなり無理があるよなぁ……。


「あら?そうなの?」

またアランが頷いている。

それにしても何故アランは時々頷くのだろうか?


「あら、あら、そういう事だったのね〜☆」

また、ウンウンと頷いている。


よくよく見ていると、ガッくんが「あら?」と言った時に頷いている。

そして、よくよく聞いていると、ガッくんの「あら?」は限りなく「あらん」って言っているように聞こえる。うん、まあ、ガッくんだからね……。


ああ、そうか!アランは「あら(ん)?」っていうガッくんの言葉に、自分の事を呼ばれたと思って頷いているのか!

1つ謎が解けた。

それにアランは耳が良いんだな。


無駄にそんな事に感心していると、今度は誰かが部屋のチャイムを鳴らす音がした。

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