よ〜〜く考えてみようー1
アランは 部屋の隅で膝を抱えて落ち込む僕を、よくわからない言葉ではあったが、慰めているようだった。
「ああ……せっかく異世界に来たと思ったのに……異世界に来たのはアランの方で、僕はアランを呼び寄せた(?)だけで……とにかく野望を叶えたのはアランの方で……」
アランが異世界に来たかったかなんて定かではないし、それこそ いい迷惑だったのかも知れない。
ブツブツと呟く僕が薄気味悪かったのだろう。しばらく慰めていた(と思われる)アランも、呆れ顔で僕から離れていった。アランは梱包されているダンボールの中から、僕の本を取り出し、不思議そうに眺めだした。
その後もダンボールを色々物色していたアランは、テレビのリモコンを見つけた。興味津々で あちこちボタンを押しているうちにテレビの電源が入ってしまった。
「€#*☆$〆⁈」
急についたテレビの画面にアランは驚いて、リモコンを放り出した。子鹿のような目で震えながらこちらを見ている。僕に向かって何か叫んでいるけれど、残念ながら何を言っているかわからない。
「€#*☆$〆⁈」
「大丈夫、テレビだよ」
アランはダンボールの陰からテレビの様子を伺っていたが、テレビに害が無いとわかると、今度は興味津々で匂いを嗅いだり、叩いてみたり、画面の裏側まで覗き込んでいた。
落ち込んでいても仕方がないので、とりあえず腹ごしらえをしようと、やっとの思いで探し当てたヤカンに水を入れてお湯を沸かし、カップ麺を作った。
「どうぞ」
アランにカップ麺と箸を渡し、僕の食べるところを見せて、
「こうやって、食べるんだよ?」
と真似をさせた。
「◇×○×△×××‼︎」
熱かったのか、なんか叫んでた。
箸の使い方がぎこちなかったが、(おそらく)初めて食べたカップ麺が気に入ったらしく、そのシュッとした風貌とは かけ離れた感じで 子供のようにはしゃいでいた。
「これからどうするかなぁ……」
現実と非現実の狭間に立たされたような気がした僕は、とりあえず現実逃避に走った。
「もう寝よう……」
寝て起きたら、これが夢だったか、それか今度こそ僕の方がアランのいた異世界に行けていないかなぁと僅かな望みを託し、僕らは眠る事にした。