その日、僕は扉にアタマをぶつけてしまったんだー3
「どうしようかなぁ……」
お腹は空いたけど、今さら外に出にくい。
ドアスコープから外の様子を覗くと、遥香ちゃん達がまだ立ち話を続けていたので、ますます出にくい。
「……まあ、いいか。探せばカップ麺の1つも出てくるだろう」
そう呟きながら ダンボール箱をいくつか開けて物色してみた。
「んー、無いなぁ……」
ガタン!
背後にあった1つの箱が落ちてきて中身が飛び出してきた。
「ビックリしたぁ。あ、カップ麺みっけ」
母親が適当に入れてくれたのだろうか。箱の中にはカップ麺やら、レトルトのカレーやら、すぐに食べる事の出来そうな食品が色々出てきた。
「やかんは……」
振り返って今度はやかんの入った箱を探した。
するとまたもや背後から箱が崩れてきた。そして何かが後頭部を直撃した。
「痛っ!」
箱の側に落ちている物を見ると、手鏡だった。どうやら中に入っていたらしい。僕は足元に転がっている手鏡を拾い上げた。
「引っ越してすぐに2回も頭をぶつけるなんて、幸先悪いなぁ」
僕は後頭部にコブでも出来てるんじゃないかと思い、確認しようと手鏡を持ってユニットバスのドアを開け、洗面台の鏡の前に立った。
「どれ……」
鏡と手鏡で合わせ鏡をして後頭部を確認しようとしたが、不器用なのか、中々上手く映せなかった。
「あ、見えた」
少し赤くなっているようにも見えるが、こぶが出来ている訳でもなかったし 血も出ていないし 大丈夫そうだ。特に心配するような事は何もない。今も後ろにいる金髪碧眼のイケメン男と洗面台の鏡越しに目が合ってるだけだし……。
「へ⁈」
驚いて振り向いたが誰もいない。
「気のせい……か⁈」
気を取り直して振り返り、鏡の方を見ると さっきの男がまだ映っていた。
「うわぁ‼︎」
手鏡を握りしめ、振り向いたがやはり誰もいない。
そ〜っともう一度振り返り、洗面台の鏡を見たが 今度は誰もいない。
「やっぱり頭をぶつけたから、おかしくなったのかな……?」
心配になり、サーっと血の気が引く感じがしたので、顔色を見ようと 僕は握りしめていた手鏡を覗き込んだ。そこには僕ではなく、先程鏡の中にいた男の顔が映っていた。
「うわあぁぁっ‼︎」
あわてて手鏡を放り投げると、僕は足を滑らせ、尻もちをついた。そしてそのままバタつかせていた手が ユニットバスのドアに当たって跳ね返って来てしまった。
そしてそれが本日3回目の後頭部への打撃となり、僕は風呂場で気を失ってしまった。