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2/10

その日、僕は扉にアタマをぶつけてしまったんだー2

「あ"〜〜〜っ‼︎ 痛ったぁぁぁ〜〜〜‼︎」


僕は頭を押さえてうずくまっていた。

そこへゴミ捨て場から戻って来た遥香ちゃんが 僕に駆け寄って来て声を掛けた。

「だ、大丈夫ですか⁈」

「だ……だい、大丈夫、……です……」

こういう時って、人はどうして見栄を張るんだろうか?本当は全然大丈夫じゃないのに。

痛みをこらえながら顔を上げると、大きな瞳が僕を心配そうに見つめていた。

しかし目の前にいたのは遥香ちゃんではなく、珍妙な風貌の男だった。

「ぅわあぁぁぁぁっっ‼︎」

「きゃあぁぁぁぁっっ‼︎」

整えられてはいるがだいぶ太めの眉。原色モザイク柄の奇抜な服装。何より男なのに乙女のような立ち振る舞いで、背がチンチクリンだ。

「ゴメンなさい!ゴメンなさい!まさかドアの前に人がいるなんて思わなくって‼︎」

なるほど。この男が僕の後頭部の激痛の原因か。

「ほんっとうにゴメンなさいね〜。なんか外で話し声が聞こえたもんだから〜、様子を見ようと思って思い切りドアを開けちゃった☆」

ベタな漫画のドジっ子のように、ペロッと舌を出してはにかんでいるこの男が隣人……?おネェの人なのかな……?

僕は痛む後頭部をさすりながら、この珍妙な隣人に「普通の部分」は無いものかとジロジロと観察して探してみた。


……うん、無いね。皆無だね。


「この階には、遥香ちゃんと〜、ボクしか住んでなかったし〜、昼間バタバタ音がしてたから、今日引っ越して来た人かな?」

その話ぶりと動きを見て思った。


ああ、うん。もう、おネェ決定でいいかな……。


「やぁ〜だ〜もぅ〜!ボク、そそっかしくて自分でも嫌になっちゃう!」


はーい決定。


しかし珍妙とはいえ隣人には違いない。痛む後頭部をさすりながら、引っ越しの挨拶をしなくては。


「あの、隣に引っ越して来た大森幸多です。そこの大学の文学部の1年です。よろしくお願いします」

会釈をしながら、一通りの挨拶をした。

「そうなんだ〜。まあ、ここの住人のほとんどが あの大学の生徒みたいだからね〜。あ、ボクは人間学部の1年生。ボクね、帰国子女なの☆ アメリカにいた頃は〜飛び級して大学院まで行ったんだけどぉ〜、日本の大学にも行っとこうかな〜と思って☆ちなみに〜、浅草生まれのアメリカ育ち、乙女座のAB型で〜す☆」

無駄にキャピキャピとした自己紹介をされてしまって少し戸惑っていると遥香ちゃんが話に割って入ってきた。

「あの……」

遥香ちゃんが話し掛けたのは残念ながら僕ではなく、珍妙な隣人にだったが……。

「あの……、がくくん……学くん、名前、まだ名乗ってないような気がするんだけど……」


ああ、うん。確かに聞いてないね。


「あ〜!や〜だ〜!もう、あわてんぼうで本当にやんなっちゃう〜!アタ……ボクは〜、新谷しんたに がくっていうの〜。『ガッくん』って呼んでね☆」


あ、今『アタシ』って言いかけたね。


「とにかくよろしくね〜☆」

「あ、よろしく……お願いします……」

後頭部は痛むし、隣人はあまりにもキャラが強烈過ぎて、その場に居るのが辛くなってきた僕は、とりあえず部屋に戻る事にした。

「じゃあ、あの、部屋の片付けもあるので、僕はこれで……」

部屋に引っ込む僕に、変人……じゃなかった、隣人の『ガッくん』は、手が手首から先を飛ばしてしまいそうな速さでブンブンと振りながら、

「バイバーーイ!またネーーー!」

と、体をクネクネしていた。

遥香ちゃんは頬の横のあたりで、可愛らしく小さく手を振ってくれていた。せめて遥香ちゃんがお隣だったら良かったのに……。


そして部屋に戻った僕は 一番重大な事を忘れていた。

「あ……晩ご飯……忘れてた……」

『ぐぅぅ』とお腹の鳴る音がした。

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