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おちんちんを取り戻せ  作者: 別次 孝
33/39

公女殿下親衛隊長 クロミィ その5

この作品はR15です。

お察しください。

「クロミィ、そこにいるのかっ!」


 不意に、自室の扉が激しくたたかれて、クロミィはわれにかえった。窓から見える空は、すでに明るくなっている。


 (寝ていた? いつのまに? いま、何時ころだ?)


 もつれそうになる足をなんとか動かして、あわてて扉をあけると、そこには騎士団長エキザーベの姿があった。


「だ、団長……どうされたのですか」


「どうもこうもない。探したぞ。お前、いつもの早朝練習を休んだらしいな」


「も、もうしわけございません」


「それはいい。そんなことより、シギの部隊が国都に侵入してきた。兵士たちの指揮を……とれるか? ずいぶんと顔色が悪いが」


 言われてはじめて気がついたが、外の空気はかなりざわついていて、走り回る音や、怒鳴り声が遠くから聞こえてくる。


「あ……いや……と、とります。とれます。ば、場所は?」


「侵入場所は国都の外壁周辺だ。数は不明だが、敵の一部は市街地にも来ているようだな。もしも指揮が無理そうなら、公宮周辺で警護にあたってくれてもいいが」


「だ、だいじょうぶです。行きます。行けます」


 団長の返事を待たずに、クロミィは腰の剣に手をあて、外へと走りはじめた。背後で団長がなにかを大声でさけんだような感じもしたが、深く気にはとめなかった。


 からだが、重い。ふらふらする。

 それでもがまんして走り続け、ようやく前線らしき場所へと到着した。剣や槍を手にした兵士たちのほかに、避難してきたらしい民の姿も見える。

 そこでへたりこんでいた、兵士のひとりを捕まえる。


「状況はどうなっているっ」


「わ、わかりません! さっきまで指示を出してくれていた、騎士のかたが倒されてしまいまして、動ける者だけ、なんとかここまで……」


「つまり、まだ先に兵士や民が残っていて、逃げ遅れているのだな」


「そうですが……あっ、待ってください、いまから行っても間に合いません、しかもそんな恰好でっ」


 その声にかまわず、クロミィは外壁に近いほうへと、さらに走る。

 たどりついたところは、地獄だった。

 床石から石壁にいたるまで、真っ赤に染め上げられている。

 人間だったとおぼしき、血と肉のかたまりが、ごろごろと転がっていた。

 生きて動いているのは魔族たちだけのようである。


 吐き気をがまんしながらクロミィが重い剣をかまえると、それに気づいた敵の一匹が立ちあがった。ひざをついて、うつぶせにちかい姿勢の魔族がからだを起こすと、その下から白っぽいなにかが姿をあらわす。


「おのれ、きさま……」


 クロミィが口にできたのは、それだけだった。

 魔族の下にいたのが裸の人間の女性で、まさに乱暴の真っ最中であった、と理解できたのだ。

 その女性はぐったりとして、ぴくりとも動く気配がない。瀕死か、もしくは残念ながら死んでいるか、のどちらかだろう。


 魔族が、下品なだけの笑みをうかべる。

『おいおい、若くてきのよさそうなメスが出てきたな。こいつは上物で、身分も高そうだ。こんな庶民のババアよりも楽しめそうだぞ』


 その声を合図にして、周囲にいた総勢五匹の魔族たちが、クロミィを包囲しはじめる。


 (兵卒、ではないが、それほどの圧迫感を感じない。什魔長ジクアスていどの敵か)


 クロミィの腕前であれば、まとめて相手にできないこともない。ミサキには一方的に負けたとはいえ、人間単体としてなら、クロミィは相当に腕がたつ。本人がそれを誇示しないというだけのことだ。

 だから、本当であれば、クロミィは勝てた、はずだった。

 仮に、万全の状態であったのであれば。


 明らかに格下の相手だったにもかかわらず、クロミィは敵の先制を許した。余裕をもってかわすつもりが、間一髪のところまで押し込まれる。

 からだが、とにかくだるい。思うように動けない。

 腕も、鉛をぶらさげたかのように重く、いうことを聞かない。

 クロミィの反撃は弱々しく、簡単にはじき返される。

 逆に男の魔族が放つちからまかせの攻撃を、剣でまともに受け止めてしまう。足がふんばりきれずに、クロミィのからだが吹っ飛ばされ、壁にしたたかにたたきつけられた。

 呼吸が止まる。


 そしてここにいたって、ようやくクロミィは気づいた。

 自分が防具を身につけていない、ということを。

 あまりにもからだが重いので、てっきり鎧を着ていると思いこんでいた。まさかの布一枚という軽装であり、そうであると今まで理解できていなかった。

 そういえばさっき、団長と別れるまぎわ、防具がどうとか指摘されていたかもしれない。

 記憶がはっきりとせず、そのときのことが良く思い出せない。頭も打ったようだ。


 にやにやと、いやらしい顔をした魔族の一匹が、クロミィのほうへと近づいてくる。剣を握りなおそうとして、その剣が、ない、と気づく。吹っ飛ばされたとき、落としたらしい。


 (これはひどいな。自分の状況が把握できていないなど、騎士失格、だ……)


 うちつけた背中はひどく痛み、息をするのも苦しい。後頭部もずきずきして、思考が定まらない。そんなクロミィに、魔族の男が、容赦なく手をのばした。

 服が、左右に引き裂かれる。双丘がこぼれでた。直後に、今度は布地が上下に引きちぎられる。あっというまに、クロミィは生まれたままの姿になった。


「あ、ああ……」


 なにをされるか直感的に理解したのに、声に出せたのはそれだけだった。

 ほとんど本能的な恐怖だけで抵抗しようとしたが、五匹の魔族たちはいとも簡単にクロミィをおさえつけた。手慣れた様子で分担して、腕を押さえ、足を抱え込む。

 リーダーらしき一匹が、うれしそうに一番乗りで覆いかぶさってくる。


「やめ……むぐっ」


 クロミィの口が、魔族の男によってふさがれる。無理やりに口を開かされ、汚い紫色の舌が容赦なく口内を蹂躙した。魔族が臭い息をあらげながら、思う存分にクロミィの唇をむさぼる。

 クロミィののどが、上下した。

 狙い通りに、目の前のメスが自分の唾液を飲みこんだのを確認して、魔族が満足そうに笑みを浮かべた。

 それが、クロミィのファーストキスだった。


 (自分は、けがされたな)


 もうろうとする頭で、クロミィは理解していた。

 生まれてから十九年間、貞節を大切に守り続けてきた。

 剣術ひと筋ということもあって、クロミィには男性経験がまったくない。

 接吻も、抱擁もそうだし、裸を誰かにみせたこともない。それ以上の行為など、もちろんもってのほかだ。

 その大切に守ってきたものが、いままさに、壊されようとしている。

 それもいちばんひどいやりかたで、徹底的に。


 つよい喪失感をおぼえて、

 それが既知の感覚である、

 とクロミィは気づいた。


 おなじ感覚を、つい昨日も感じたではないか。

 大切な主君がけがされたと聞かされて、絶望感をおぼえたはずだ。


 クロミィは十四歳で騎士になって、すぐに公女さまの親衛隊になった。

 当時十歳の公女さまは、とても愛くるしいお姫さまであり、

 同時に、年下とは思えないほど、聡明でお優しいかたであった。

 クロミィにとっては、ある意味あこがれの存在といってよかったから、

 そんなかたを守れることが、クロミィはとても誇らしかった。


 十七歳で公女さまの親衛隊長になっても、その気持ちはつよくなりこそすれ、まったく変わることがなかった。

 だから、この五年間、主君を大切に守ってきた。

 これからも、ずっと守り続けようと誓っていた。

 自分の一生をかけるに、ふさわしい仕事のはずだった。


 その、主君をひどくけがされた。

 取り返しがつかないことになった。

 その事実と絶望に比べれば――


 (――自分の貞操など、どうでもいいことだ)

 

 と、クロミィは笑った。笑うしかなかった。そして、


 (これで公女さまと、おなじ立場になれる。おなじ気持ちを共有できる)


 奇妙な、満足感にも似た感覚。

 それをなんと表現したらよいかわからなくて、ただただ、ひたすらにクロミィは困惑した。

 そんな本人をよそに、魔族が容赦なく首に手をかけてきた。


『抵抗すれば、首をへし折って、殺す。死にたくはねえだろ?』


「……はい」


 なぜうなずいてしまったのか、クロミィ自身にも、よくわからない。

 ただ感覚的に、ここで死を選ぶことは、人生から逃げ出すことと同義だ、と認識していたのかもしれない。


 (この時間を、受け入れなくてはいけない。これは罰なのだ)


 騎士であり、親衛隊でありながら、主君を守れなかった罰。

 主君が穢されたことに気づかず、のんきに無頓着であった罰。

 そして、主君のかたきをとることすらできなかったことへの罰。

 そう、これは罪深い自分への厳しい罰なのだ。

 どんなあつかいを受けようとも、耐えねばならないだろう。


 ちからをうしなったクロミィにむかって、五匹のけだものが、舌なめずりをしながら手をのばしていく。クロミィが無抵抗になった、と魔族たちは理解したようだ。人間の兵士が周囲にいないのをいいことに、たっぷりと時間をかけてメスを徹底的に味わう、と決めたらしい。

 それは、地獄の時間のはじまりだった。


 いっそ乱暴にされれば、ことは強引に進み、さっさと終了したにちがいない。だが、クロミィが上物で相応の身分だとわかった魔族たちは、必要以上に優しく、丁寧になった。

 魔族たちの目的は、乱暴することから、陥落させることに変わっていたようである。肉体だけでなく、心までも標的にしてきたのだ。

 色がどうだ、形がどうだ、反応がどうだ、とわざと聞こえるように大声で言いながら、クロミィの身体からだを、文字通りにあたまのてっぺんからつま先まで、堪能していく。

 上も下も、前も後ろも、くりかえし、執拗に。


 並の女性であれば、とうに恐怖と衝撃で失神していたにちがいない。

 ところが、それすらクロミィには許されなかった。精神力が高く体力も豊富なクロミィの肉体が、無意識の世界への逃亡を許してくれない。

 いつ終わるともしれない、屈辱と絶望の時間。


 (もう、耐えられない……やっぱり、いさぎよく死のう……舌を噛みきれば……)


 死を覚悟したクロミィが思うのは、やはり主君である公女さまのことであった。

 もし自殺をしたら、公女さまはどうお考えになるのだろうか。

 生きていてほしかったと、泣いてくださるだろうか。

 それとも、死んで当然の役立たずだと笑われるだろうか。

 逆に死なずに生きのびたら、喜んでくださるのだろうか。

 それとも、自殺する勇気がない臆病者だと、お責めになるだろうか。

 それを冷静に判断するだけの気力が、もうクロミィにはない。


 ふっと心に浮かんできたのは、昨夕のことであった。

 公女さまが『死にたくない』と泣きくずれた、その場面を、クロミィは思い出した。

 だから、クロミィは、舌を噛み切ることが、できなかった。


「公女さま……自分も……死にたくないです……」


 口にした瞬間、クロミィの目から、とうとう涙がこぼれた。ひとたびせきを切ったようにあふれてしまうと、もうとまってはくれない。

 そこにいたのは、騎士団の副団長でも、公女殿下の親衛隊長でもなかった。

 ただ泣きじゃくるだけの、ひとりの十九歳の少女だった。


『おい、ようやくこのメスが堕ちたぞ。そんじゃ仕上げといこうじゃねえか。オレが一番乗りだ、あとの順番は決めておけ』 


 魔族が下品な声で宣告すると、クロミィに覆いかぶさってきた。

 その重さにうめいた口は、すぐ強引にふさがれてしまう。ついさっき初めて経験したはずのその行為は、もう何回くりかえされたのか、まったくわからなくなっていた。


 クロミィは、涙に濡れる瞳を、そっと閉じる。

 こうすれば、この過酷な現実を、すこしだけ見ないですむ。せめてもの気休めだった。

 その直後、クロミィの顔に、臭くて生ぬるい液体が、大量にかけられた。その量があまりに多いので、息をするのもつらかったほどだ。思わずクロミィは咳こんで目をひらく。


 そこに見えたもの。

 自分にのしかかる、首のない魔族のからだ。

 自分にふりかかる、吹き出す大量の青い血。

 叫び声を合図に、魔族たちがクロミィから離れていく。


「まったく、手のかかるめんどうな女だねー。だが、それがいい(にやっ)!」


 聞き覚えのある、少女の間の抜けた声がした。

 視界のすみで、魔族たちが、奇声をあげてその少女に襲いかかっていく。

 ぐったりとして身動きのとれないクロミィの裸身が、不意に布地につつまれた。


「大丈夫ですか? おけがは……ないようですね。よかった、ギリギリまにあったようです」


 クロミィのからだをローブのようなもので包むと、バーテンダー姿の男装少女が、そっと壁によりかかるように、座らせてくれた。からだをぬぐい清め、水を飲ませてくれる。


「ご心配はいりません。敵の魔族はあの莫迦ばかにまかせておきましょう」


「イヤッハー! 汚物は消毒だー!」

ガイドラインを読んだのですが、

R15とR18の境目がよくわかりません。

他の投稿者さまの作品なども参考にすると、

わたし自身は余裕でセーフだと思うのですが、

実際にはセフトくらいかもしれません。

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