聖法剣士ミサキちゃん その2
え? 百ペリカは安いって?
そんなことはねぇよ。
えらい先生だって言ってるだろ?
金は命より重い……!
実はこの世界では、ある意味、それは真実だったりもするのだ! ざわ……ざわ……。
というのも、国によっては、いまだに人身売買をしてるからである。
より正確には、奴隷売買といった方が正しいかもしれない。つまり、奴隷制度みたいなものがある国が、そこそこ存在してるのだ。
奴隷、つっても法制化されてるようで、ちゃんと権利は認められてるし、想像するほどひどい扱いを受けてるわけでは、どうもないらしい。だからなんて説明したらいいかな、単純にいうと、どうやら国家運営に係るシステム上の問題らしいのだ。
おいおい、そこで引かないでくれ。俺だって、たまには真面目な話もするさ。いつも、おちんちんの話題しかないわけじゃあないぜ。
さっくり解説すると、まずは国の数の話だが、どうやらこの世界の人間界には、だいたい二百の国家が認められてる。
二百だぜ? 結構な数だろ? 俺が元いた世界、つまり地球上の国の数と、そう変わらないんじゃないかな。地理はあんまり真面目に勉強してなかったから、くわしくは知らんけどさ。
当然のことだけど、この世界も国の大きさにはずいぶんとちがいがある。巨大な国もあれば、いま俺がいるイミィグーン公国みたいに、えらくちっちゃな国もある。
ちなみに、超大国って呼ばれる五つの国は、常備軍だけでフツーにそれぞれ十万人を超えてるらしい。それと比べると、イミィグーン公国の常備軍五千人というのは、まあおもちゃの兵隊みたいなもんだ。
それでも、この公国は自治も認められてるし元首もいるから、もちろん一国としてカウントされてるけどな。
で、何を言いたいのかというと、国によって政治体制がずいぶん異なる、ということなのだ。
奴隷制度のところもあれば、封建制度のところもあるし、ガチガチの神権政治のところもある。民主制度っぽいところもあるけど、残念ながら、男にしか参政権がないみたいだ。
やっぱり大切なのは、おちんちんといったところか。
なにぃ! 結局、おちんちんの話になってるじゃないか! なんてざまだっ、女将を呼べぇ!
話がそれたぞ。
さて、奴隷制度も、ひとつの国家運営システムにすぎないわけだが……ごめん、最初はなんの話だったけ……ああそうだ、お金の話だったな。
そうそう、お金で思い出したのだが、そろそろお金の手配をしないといけないのだ。
このミサキちゃん、残念なことに、住所不定の無職です。
親戚もいないし(正確にいうと、いるのかどうか分からない)、保証人もいないので、どっかで働くのは、ちょいと難しい。それに俺の目的は、この女体の元の持ち主を探すことにあるから、旅を続けてたいので『どこか一ヶ所に留まって生活のための労働』というのは歓迎できない。
いわゆるギルドみたいな組合組織は、いちおう存在する。そこに入ってあっちこっちで仕事をもらいながら持ち主探し……っていうのが妙案かもしれないが、そもそもギルドの入会資格が結構メンドイっぽい。コネのない少女ひとりでの入会は、かなり厳しそうだ。
じゃあどうすんの、もしくは今までどうしてたの、って訊かれるかもしれないが、実は裏技があります。さすがに自分で会得したわけではなくて、方法はヨヨちゃんに教わりました。
あ、ヨヨちゃんっていうのは、前に例の仟魔長が言っていた、センヨヨという名の魔族のことです。
話すと長いんで、そのうち機会があれば説明するけど、まあ『変わり者の物知り魔族』だと思ってくれればオッケーだ。
その金策の方法だけど、まあ、説明するよりやってみせた方が早いかな。
「ケイコちゃん、ちょっといいかな、ね? そこの小川ぞいに落ちてるちいさな石ころ、好きなのをいくつか選んで、もってきて欲しいんだけどなー」
ケイコちゃん、ちょっぴり不思議そうな顔をしたものの、すぐにペンギン歩きで言う通りにしてくれました。なんていい子なんだ、あとでチューしてあげなくてはいかんな(報酬としての義務的な意味で)。
何も言わないのに、ケイコちゃんは小川の水で、石ころを洗ってからもってきてくれた。気がきくなあ。
俺はもらった小石を左手の手のひらの上に置くと、右手で短剣を抜いた。
当然のようにオートで白く光りはじめた聖剣を調節して、その光を、細く弱く絞る。
そして、手の上の石を、剣の白い部分で軽くこつこつとたたく。
たたく。たたく。たたく。
小石を割らないように、ていねいに、だがしっかりと。
そうするうちに、聖力が石にうつって、石自体が淡く白く光りはじめた。ケイコちゃんがそれを見て、ほえー、みたいな声をあげた。その白く輝く石を、そっとケイコちゃんの手にのせてあげる。もともとプレゼントするつもりだったから、ケイコちゃん自身に素材を拾ってきてもらったのだ。
はい、この白く光る石が、聖輝石です。もろ、お金になります。
買い手は、聖法術師とか、軍隊とかかな? 国の役所で換金してもらえる。聖輝石は、石にたまった聖力を引き出して使うものなんだけど、けっこう人気があるのだ。
聖力って言うのは、簡単にいえば精神のパワーに近い。普通の人間は、個人で一日に使える聖力の量には限度がある。
だから、石とか宝石とかに聖力をためて聖輝石とし、必要なときに石の聖力を解放し、自分の聖力と合算して使う、とのことだ。電池みたいな感覚だろうか。素材の石なり宝石なりは、繰り返し使えるから、電池というよりも充電池のほうがより正確かな。
んで、前にも話したが、この俺の女体はかなりの廃スペックだ。
一般人とちがい、湯水のように聖力が湧いて出るので(魔力もそうなのだが、正直限界に達したことがないのでMAX量は不明)、聖輝石は作り放題である。
当然、お金も稼ぎ放題なのだ!
……と思っていたのか、カカロットォ!
世の中、そんなに甘くはなかった。
最初のころ調子に乗って、あーひゃっひゃっひゃ、みたいに鬼のように石を白くさせまくり、交換所に自信満々で持ち込んだら、速攻で警備兵を呼ばれました。
「よくも、こんな国宝級の聖輝石を!」
「盗んだなコイツ!」
「攻撃目標はあの少女だ!」
みたいな流れになって、あれは本当に大変だった。
つまり、聖力を籠めすぎたのが良くなかったのだ。あれ一個で、小国なら買い取れるような価値のあるスゴイ代物を、俺は作り上げてしまってたらしい。
そのあと、廃スペックを生かして、とにかく逃げまくった。正直、魔族だって殺すのはすこし抵抗があるのに、人殺しだけは絶対にゴメンだったからな。
おかげで、あの国には出入り禁止になりました。たぶん今でも指名手配されてると思う。国境超えればセーフなのは幸いだった。国際警察とかあったらアウトだったね。
すなわち、過ぎたるは、及ばざるがごとし。
いまでは安っぽい質の聖輝石しか作っていないぜ。しかも、そこそこの数を、場所と日にちを変えて、何回かに分けて売っている。それなら怪しまれない、というわけだ。
色々と聞いてわかったのだが、聖輝石というのは、俺みたいに聖法術師が自作するケースより、戦場で入手されることの方が多いとのことだ。
つまり、戦場で術師や騎士が聖法をバンバン使って戦闘をすると、周囲の石みたいな無生物に、聖力の余波が染み込んでいくのだ。たとえば、近ごろ戦闘があったというウーソ村にいけば、それ相応の聖輝石がきっと落ちてることだろう。そのうち遺体の埋葬がてら、誰かが拾いにいくにちがいない。
なので、今回は『ウーソ村で拾いました』とかごまかしてもいいかもしれない。
もちろんだけど、これの魔力バージョンもあって、魔闇石という名前です。
魔族の世界で、やっぱりお金のように扱われるとのことだ(ヨヨちゃん談)。
当然、戦闘後のウーソ村には魔闇石も一緒に落ちてるだろうが、普通の人間にはまず扱えない。そういうのは聖職者や聖法術者が集めて、お払いしてから処分するらしいぜ。
……ふう。なんか、真面目な話ばっかりしてたから、肩がこったぞ。こんなときは、幼女を愛でるに限る。
ほらケイコちゃん、こっちへおいでよー。
しつこいようだが、俺はロリコンじゃな(以下略)。
そんなこんなで、ケイコちゃんと一緒にご飯を食べたり、添い寝をしたり、チューしたりして移動するうちに、数日で国都についた。
はい? すんげー空気がピリピリしてるんだけど、何これ?
動員中の臨戦態勢って、こんなきっつい感じなのか。
なるほど納得の警戒態勢だけど、これは簡単に中に入れないかもなー。
俺はまあいいけど、ケイコちゃんは何とかしたいなあ、どうすんべか。




