第八話
「ここが家だ」
恭輔に案内されて着いた場所は、何の変哲もない二階建ての一軒家だった。
玄関の近くには畑もあり、野菜を育てているようだ。
「私も入っていいの?」
「ああ、親にも報告したいしな」
両親へのご挨拶のようで、美咲は変な感じだった。
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「ただいま」
「おかえりなさい、早かったわね」
玄関に入ると奥から恭輔の母が出てきた。
人の良さそうな顔立ちだった。
「あら、その子は?」
「ああ、家の近くで会ったんだ。
話すと少し長くなる」
「ちょ・・・ちょっと、あなた!恭輔が女の子を!」
恭輔の母は慌てて夫を呼んだ。
「どうした?大声を出して」
急に呼ばれた恭輔の父は小走りで出てきた。
非常に真面目そうな父だ。
「お、おじゃまします」
美咲は恭輔の両親の勢いに圧倒されてしまった。
「恭輔・・・お前、こんな可愛い女の子を連れてくるなんて」
「父さん、それどころじゃないんだ」
恭輔は後ろを向き、背負っている凛を見せた。
「凛!また発作が起きたのね?」
「ああ、母さん頼むよ」
「わかったわ」
恭輔は背負っている凛を母に預けた。
凛を抱きかかえた恭輔の母は、二階に上がって行った。
「父さん、話したいことがあるんだ」
「ああ、その子は?」
恭輔の父は息子の後ろにいる美咲に視線を向けた。
「はじめまして、美咲といいます」
「美咲が凛の発作を抑えてくれたんだ」
「ほぉ・・・まあ上がりなさい」
「はい、おじゃまします」
美咲は、またヴォイドに言われるだろうと思いながら、家に上がった。
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「ほぉ、治癒魔法でな~」
恭輔の父は頷きながら言った。
「はい、私もよく覚えてないんですけど」
「でも凛の病気は治らないんだろ、父さん?」
「ああ、医者が言うには今までに無い症状みたいだからな。
魔法でも治るかどうか・・・」
息子の問いに、父は渋い顔で答えた。
「凛ちゃんはいつから病気なんですか?」
「生まれたときからだよ、今でも治療法を探しているんだが」
恭輔の父は目を閉じて、首を横に振った。
「地下の書庫に手掛かりがありそうでも、文字が読めないんだ。
もう使われていない文字ばかりでね」
「地下・・・あの、私も見させてもらってもいいですか?」
「ん?ああ、廊下に降りる階段があるから好きに使ってくれて構わないよ」
恭輔の父は廊下を指差すと、ちょうど二階から恭輔の母が降りてきた。
「母さん、凛は?」
「ぐっすり眠ってるよ」
恭輔の問いに、母は微笑んで答えた。
「じゃあ、今ご飯作るからね」
「あ、私も手伝います」
「あら、助かるわ」
美咲は、台所に向かう恭輔の母に付いていった。