第六話
主人に言われた通りに、街を出て北に進むと森に囲まれた砂利道に出た。
その道を進みながら、美咲はパンプスではなく、スニーカーを履いてきて正解だと思った。
「魔法ってどうやって使うの?」
美咲は今まで一度も自分の意思で魔法を使ったことが無いので、
使い方を知らなかった。
{そうだな、魔物と会うこともあるかもしれないし、そろそろ教えておこう}
「え?魔物ってそこら辺にいるものなの?」
{ああ、ここら辺はいないみたいだがな}
「やだな~、魔物っていっても生物の命を奪うわけでしょ?」
{ふ、とんだお人好しだな。心配するな。
魔物は魔界から来ていて、倒しても魔界に送り返されるだけだ。}
「そっか、なら安心だね」
ヴォイドは、こんなので大丈夫かと不安になってきた。
{それで、魔法の使い方だが至って簡単だ。
この世界には目に見えない精霊や元素がそこら中に存在している。
そいつらを従えて、力を借りるんだ。}
「なるほど」
{今のお前の魔力では、元素が精一杯だろうな。
だが、お前は魔術師の孫娘というだけあって、相当な魔力を秘めている。
経験を積めば魔力が解放されて、強力な魔法が使えるようになるだろう}
「お婆ちゃんのお陰ね・・・」
{そうだ、使い方はお前の頭に直接教えてやろう}
すると、美咲は頭の中に何かが流れ込んでくる不思議な感覚にとらわれた。
「な、何これ・・・」
{これで基本的な魔法は使えるだろう}
「あ、ありがとう」
少しフラつきながらも、美咲は再び歩き始めた。
☆★☆★☆★
「あれ?あの子・・・」
症状も落ち着きしばらく歩くと、少女がしゃがみ込んで花を見つめているのを見つけた。
「きれいなお花だね」
少女の傍に屈み込み、花を見つめながら話しかけた。
「お姉ちゃん、だーれ?お兄ちゃんのお友達?」
大きな瞳が印象的な少女だった。
色白で華奢な体つきをしており、年齢は小学生ぐらいだろうか。
「ううん、違うよ。
お姉ちゃんは色々なところを回って、旅をしてるの」
こんな少女に魔王軍を探しているなんて言えるはずが無かった。
「ホントに!?」
大きな瞳を輝かせて、見上げてくる。
「そうだよ」
「凛もお姉ちゃんと一緒に行く!」
「え?」
凛という少女は美咲の服の裾をしっかりと掴んだ。
「あのね、旅って危険なんだよ?
それにお父さんとお母さんが心配するし・・・ね?」
凛はうるうるとした瞳で美咲を見つめている。
「お姉ちゃんは凛のこと嫌いなの?」
「いや、そうじゃなくて・・・」
どうすればいいかわからず、美咲は困惑してしまった。