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平和な世界  作者: タフボーイ
第三章
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第五十一話

「暗くなってきましたね」


 美咲は紫色に染まった空を見上げた。

 異世界の方が、現代よりも空が綺麗だ。

 今まで空を見るようなことがなかったためか、余計そう感じる。

 振り返っても、最後尾の顔が見えなくなってきた。


「そうだね、今日はこの辺で休もう」


 レイブンは足を止めて振り返った。


「火はどうする?」


 恭輔は辺りの様子を窺っているレイブンに問いかけた。

 レイブンは恭輔の顔を見ると、微笑んだ。

 恭輔はその笑顔に何か嫌な予感がした。


「恭輔、君は体力には自信があるよね?」


「何が言いたいんだ?」


「別に?ただ彼らには戦う力が無いし……」


 レイブンは怪訝そうに見てくる恭輔から目を離して、肩で息をしている集落の人々を見た。

 今まで魔物に操られていたせいか、体がまだついてこないようだ。


「あの、私が薪を集めてきましょうか?」


「美咲ちゃんが?」


「はい、私はまだ動けますから」


「うーん、女の子には行かせたくないんだけどな~」


「わかった、行けばいいんだろ?」


 恭輔は剣を背中から外し、美咲に預けた。

 押しつけられた美咲は戸惑いながらも、剣を両手で受け取った。

 しかし、剣は思った以上に重く、足元がふらついた。

 ――恭輔はいつもこれを使いこなしてたんだ。


「そうかい?悪いねー」


「行って欲しいって素直に言えばすぐに行ったよ」


 恭輔は皮肉を込めてそう言うと、森の方に歩いていった。


「あの~」


 一人の中年男性が恭輔に声をかけた。

 恭輔は足を止め、無言で振り返った。


「その必要はないと思いますよ?」


 男性は集落から引いてきた台車に歩いていくと、掛かっていた毛布を外した。

 積んであった荷物に恭輔は目を見開いた。

 それを見たレイブンは感嘆の声を上げて、台車に近寄った。


「積んであったんだ、薪」


 そこには大量の薪が積んであった。

 これだけあれば一週間は余裕でもちそうだ。


「念のために積めるだけ積もうと思いまして」


「わー、ありがとうございます!」


 美咲は両手で男性の右手を握った。

 男性は左手で頭をかきながら、照れ臭そうに笑っている。


「あるなら最初から言えよ……」


 恭輔は呆れたように呟いた。

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