第五十話
「風の元素よ……我に従い、敵を討て!」
美咲が呪文を唱えると、杖の先端から無数のかまいたちが発生した。
それはすごい速さで、魔物に向かって飛んでいく。
魔物は魔力に反応して、ツルを伸ばした。
しかし、風の刃はツルを切断しながら魔物に近付いていく。
風は音を立てて魔物を通り過ぎていった。
「まさか……外れた?」
美咲はもう一度呪文を唱えようと、杖を構えた。
それに気付いたレイブンが手で制止した。
「魔法はもう使わなくて大丈夫だよ」
美咲はそう言われて、動きを止めた。
よく見ると、魔物の体全体に穴があいている。
伸ばしていたツルが地面に落ちると、魔物は徐々に消えていく。
それと同時に、人々から歓声が上がった。
恭輔は剣を収め、肩で息をしながら戻ってきた。
それを見た美咲は微笑んで声をかけた。
「お疲れ様、恭輔」
「ああ」
恭輔の姿を見て、レイブンはため息をついた。
「その調子じゃ連戦があっても耐えられないよ?」
「余計なお世話だ」
恭輔は額の汗を拭ると、先に進み始めた。
肩が痛むのか、腕を後ろに回している。
「あんなのと二人旅なんて大変だね」
レイブンは恭輔の後ろ姿を見ながらため息をついた。
美咲はレイブンの方を見ながら、首を横に振った。
「いえ、恭輔がいなかったら私はここにいませんよ」
レイブンが美咲を振り返ると、美咲は笑顔を見せた。
その顔を見て、レイブンは少し罪悪感を覚えた。
「あの~」
村人の一人が美咲に話しかけた。
先に進んでいく恭輔に付いていくべきか、困惑している様子だった。
「あ、すみません」
美咲は人々を安心させるために、駆けて行った。
「恭輔がいなかったら……ねぇ」
レイブンは美咲の後ろ姿を見送った。
大きく期間が空いてしまいました。
見てくださる読者の方々、申し訳ありません。