第四十二話
集落は特に変わった様子はなかった。
大人達は立ち話をしており、子供達はボールを蹴って遊んでいる。
魔物が操っているようには、全く見えなかった。
「ホントに魔物なんているのかなぁ?」
美咲はゆっくり歩きながら、小さく呟いた。
しかし、恭輔の様子がおかしかったのは、自分の目で確認済みだ。
思考を巡らせていると、ボールが目の前を通り過ぎていった。
「お姉ちゃーん、ボール取ってよー」
声のした方向を見ると、少年がこちらに手を振っている。
ボールは転がっていき、家の間を抜けて畑までいってしまった。
「ごめんね、今取ってくるからー」
美咲はボールを拾いに、畑に向かった。
ボールを拾い上げようと屈んだ時、女性の話し声が聞こえた。
顔を上げると、二人の中年女性が美咲に背を向けて話し込んでいる。
「あいつらならあの男よりも使えそうだな」
「ああ、特にあの女の魔力はとんでもないぞ」
その声は、女性とは思えないほど低い声でだった。
あの男は恭輔で、あいつらとは美咲とレイブンのことだろう。
――早く戻らなきゃ!
美咲が勢いよく振り返ると、そこには少年が立っていた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
その声は女性と同じく低い声で、目が虚ろだった。
声が聞こえて、女性達はゆっくりと振り返った。
目は虚ろで、こちらに近付いてくる。
――やばい、逃げなきゃ!
美咲は逃げようとして、周りを見渡した。
しかし、気付けば辺りを人々に囲まれていた。
全員目が虚ろで、何かを呟いている。
「うそっ!いつのまに!?」
人々は足を止めると、大きく口を開けた。
すると、口から何かが目に見えない速さで飛び出した。
美咲は本能で危険を察知し、前に両手を突き出した。
その手から透明な薄い膜が張られ、美咲の体を覆った。
その直後、全方位から襲ってきた何かは弾き飛ばされた。
「あれ?」
それらは魔物だったようで、そのまま空中で消え去った。
残った人々は警戒して、距離をとった。
美咲は周りを見渡して、その場に座り込んだ。
「やっ・・・たぁ」
美咲は倒れ込み、意識を失った。
美咲が弱過ぎな気がしますが、いかがでしょうか?
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