第三十九話
「おや、あれは?」
レイブンは木々の間から、集落のようなものを見つけた。
しかし、美咲は背後で首を傾げている。
「どうしたんですか?」
「集落を見つけたんだ」
「え?」
美咲は目を凝らし、遠くを見つめた。
だが、森が続いているようにしか見えなかった。
「何も見えないですよ」
「ああ、僕は人より視力が優れているんだ」
レイブンはそう言って、自分の目を指差した。
美咲は相槌を打ちながら、何度も遠くを見るが何も見つからなかった。
「まぁ、とりあえず進もうか」
「そうですね」
しばらく進むと、レイブンの言った通り集落に着いた。
森に囲まれているため、小規模ではあるが人口は多いようだ。
「人は多いですね」
「うん、でもここは・・・」
レイブンは言葉を濁して、辺りを見渡した。
黒人や白人など、同じ民族には見えなかったからだ。
それぞれ別の地方から集まったのだろうか。
レイブンは俯いて、記憶の糸を辿った。
「用心した方がいいかもな・・・」
「何か言いましたか?」
美咲は首を傾げて、レイブンの顔を覗き込んだ。
レイブンは微笑んで、首を横に振った。
「いや、なんでもないよ」
「本当ですか?」
美咲は、じっとレイブンを見つめている。
目が合ったレイブンは、笑みを浮かべて頷いた。
「まぁ、僕に見惚れるのもわかるけどさ」
「・・・レイブンさんも恭輔と同じですね」
「え、何が?」
「私に隠し事をするところです!」
美咲は身を乗り出し、強い口調で言った。
レイブンは図星をつかれて、目を逸らした。
「そんなことは・・・」
「レイブンさんも恭輔も気を遣ってくれるのは嬉しいです。でも、仲間なら相談ぐらいしてください!」
「仲間ねぇ・・・さっき会ったばかりの僕が」
レイブンは複雑な表情を浮かべている。
その様子に気付いた美咲は、寂しそうな顔をしている。
「変・・・ですか?」
「変だね。でも、それでいいんじゃないかな?」
「え?」
「さっきの話だけど」
レイブンは美咲に顔を近づけ、耳元で囁いた。
「魔物がいるかもしれない、気を付けた方がいいよ」
「魔物が?」
美咲はレイブンの顔を見た。
レイブンは小さく頷き、後ろに下がった。
「大丈夫、僕が付いてるからね」
レイブンはウインクをすると、奥に歩いていった。
美咲は安心しながらも、背中に寒気を感じた。