第三話
「ただいま・・・」
「おう、おかえり・・・ってどうしたんだ?」
いつもと違い、元気が無く自宅に戻ってきた妹に疑問を投げかけた。
「・・・お兄ちゃんは知ってたの?
おばあちゃんが生きてたってこと・・・」
「何言ってるんだ、この前北海道に行ったとき会ったじゃないか?」
「違う!お母さんのお母さんだよ!」
美咲は母方の祖母は亡くなったと兄に教えられていた。
「・・・疲れたろ?休んだ方がいい」
「話を・・・!」
逸らさないでと言おうとしたが、なぜか体が重たい。
「うん、少し休むね」
また後で聞けばいい、そう思い部屋に入っていった。
「あいつの持ってた木の棒って・・・まさかな」
気のせいだろうとテレビに向きなおった。
☆★☆★☆★
「う・・ん・・・」
美咲が目を覚ますと外は暗くなっていた。
「あれ?少しのつもりだったのに」
部屋を出ようとしたそのとき。
{お・・・い}
「え?」
辺りを見回したが、もちろん人がいるはずがない。
「気のせいだよね」
{おい、こっちだ}
よくみると、祖母の杖がうっすらと輝いている。
「もしかして・・・」
{そうだ、私だ}
「つっ、杖がしゃべってる!?」
{正確にはお前の頭に直接語りかけている}
「そんなこと・・・あるんだ」
{ああ、ようやくお前の魔力とシンクロすることができた}
「あなたは一体・・・?」
{私はヴォイド、杖に宿る人格だ}
美咲はイマイチ信じられなかったが、今まで起こった出来事を考えれば信じざるを得ない。
{お前、かたき討ちしたいんだろう?}
「な、なんで?」
{魔力がオーバードライブしたんだ、それぐらいわかる}
「・・・なんかよくわかんないけど、襲ってきた人たちのこと知ってるの?」
{ああ、あいつらはもうひとつの世界、つまり異世界から来た連中だ}
「異世界か・・・でもね、私はかたき討ちがしたいわけじゃないよ」
{なんだと?憎くないのか?}
「確かに憎いよ、でも、そんなことしたらレギノスって人とやってることは同じになっちゃう。
そんなことおばあちゃんは望んでないと思うの・・・だから私は直接会って話をしたい。
なんであんなことをしたのか聞きたい!」
{ふ、変わった奴だな・・・まぁお前の好きなようにすればいい}
「あ、でも学校あるから休みの日じゃないと・・・」
{その心配は必要無い、向こうの時間経過は非常に遅い}
「そっか、じゃあ着替えてから行くね」
{ああ・・・わかった}
「あ、やっぱお兄ちゃんの顔見てからでいい?」
{・・・準備ができたら声をかけろ}
☆★☆★☆★
「あれ?寝てる?」
部屋から出た美咲は、ソファーで居眠りをしている兄を見つけた。
「・・・お兄ちゃん、行ってきます」
美咲は寝息を立てている兄の耳元で囁いて、部屋に戻った。