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平和な世界  作者: タフボーイ
第二章
38/82

第三十七話

前回は中途半端に終わってしまいました。

「ハニー!すぐに助けるよ!」


 青年はそう言って、美咲を振り返った。

 しかし、バイスが青年の道を塞いだ。


「行かせるわけがないだろう?」


 バイスは何度も青年に斬りかかる。

 避けることは容易いが、これではキリがない。

 青年は何かを思いついたような顔をした。


「そうだ、兵器の在り処を教えるよ」

「なに?」


 その言葉を聞き、バイスの動きが止まった。

 青年はバイスに向かって、人差し指を立てて微笑んだ。


「ただし、手を出さないことが条件だよ」

「悪魔がその条件を呑むと思うか?」

「別に構わないけど、呑まないなら永遠にここを彷徨うことになるよ?」

「・・・お前ら、もうやめろ」


 バイスの声を聞き、魔物たちの動きが止まった。

 黙って従う者と、文句を呟いている者もいる。


「さっすが~、物分かりがいいね」

「それで、古代兵器はどこにあるんだ?」

「まぁまぁ、そう焦らないでよ」


 青年はゆっくりと石碑に歩み寄った。

 すると、床に座り込んでいた恭輔がふらつきながら立ち上がった。


「お前、そんなことしたら・・・」

「まぁ黙って見てなよ」


 青年はズボンのポケットから宝石を取り出すと、台座にそれをはめ込んだ。

 台座からガタンという音が響いた。


「なるほど、それが鍵だったわけだな」


 バイスは頷き、台座に歩み寄った。

 その直後、遺跡全体が音を立てて揺れ始めた。


「なんだ?どうなっている?」


 バイスが青年を振り返ると、青年は俯いて笑っている。

 その姿を見て、バイスは眉をひそめた。


「何がおかしい?」

「いや、確かにあんたの言う通り宝石が鍵になってるよ」


 青年は顔を上げて、台座から宝石を外した。


「でも、この宝石じゃない別の宝石だ」

「まさか・・・貴様!」

「そうだよ、この遺跡は崩れる。古代兵器も一緒にね」


 すると、遺跡の壁が崩れて大量の水が流れ込んできた。


「この遺跡は海中にあるから、早く逃げないと手遅れになるよ?」

「くそっ!撤退だ!」


 バイスは真っ先に、入口へと走っていった。

 しかし、天井が崩れ落ちて、通路は塞がれてしまった。


「おや、これは予想外だね」


 想定外の出来事に、青年の予定は崩れてしまった。

 その間にも海水は流れ込み、腰まで溜まっている。

 青年は急いで美咲に近付いた。


「ハニー、大丈夫かい?」

「はい、あなたは・・・レイブンさんですよね?」

「そうだよ、でも今はそれどころじゃない」


 海水はすでに肩まで溜まってしまった。

 美咲は部屋を見渡して恭輔を探すが、姿が見当たらない。


「恭輔がいない!」

「流されたのかもしれない」

「そんな・・・」

「ここを出よう、じゃないと僕達も流される」

「・・・わかりました」


 レイブンは美咲の手を引き、崩れた壁に向かった。

 潜れば外に出られそうだ。


「しばらく潜るけど、大丈夫かい?」

「はい、息が続くか心配ですけど」

「僕が引っ張るから、安心していいよ」


 二人は大きく息を吸い込み、潜り込んだ。

 壁をくぐると、水路のようなものが続いている。

 そこを進んでいくと、横から何かが美咲にぶつかった。

 それは断末魔の表情をしたゴブリンだった。


「・・・!?」


 美咲は驚いて、肺の空気を全て吐き出してしまった。

 それに気付いたレイブンは、美咲を引き寄せた。

 そのまま顔を近づけるレイブンに、美咲は首を振った。

 どうやら口付けで空気を送ろうとしたようだ。

 しかし、そのようなことをすれば二人とも生存の可能性は低くなる。


(苦しいだろうに・・・)


 断固として拒否する美咲に、レイブンは同情した。

 レイブンは急いで、出口を探す。

 しかし、美咲は目を閉じており、すでに意識はなかった。

 ようやく海に出れた頃には、レイブンの意識もなくなりかけていた。


(くっ、あと少しなのに・・・)


 気持ちとは裏腹に、レイブンの意識は遠のいっていった。

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