第三十三話
「これが・・・遺跡?」
美咲達の目の前には、石で組まれた建物が建っている。
ほとんどが崩れてしまっていて、原型がわからなくなっていた。
「奥に入口があるみたいだな」
「じゃあ早く入ろ」
恭輔は奥に進もうとした美咲の腕を掴んだ。
美咲は訳も分からないまま、恭輔に岩の陰に引っ張られた。
「恭輔!痛い!」
「しっ、あれを見ろ」
恭輔は遺跡の入口を指差した。
そこには、鎧で身を固めた屈強な二匹のゴブリンが立っている。
「見張り・・・だね」
「あれはホブゴブリンだな、少し手強いかもしれない」
「二匹もいるしね」
美咲は顎に手を当てて、考え込んだ。
何か思いついたように、恭輔に耳打ちをした。
「よし、それでいこう」
美咲は頷くと、指輪を杖に変えた。
恭輔は近くに落ちていた小石を拾い、遠くに投げた。
小石は岩にぶつかり、音を立てた。
見張りのゴブリンは、音のした方向を振り向いた。
「おい」
「ああ、俺が見てくる」
一匹のゴブリンが、警戒しながら持ち場を離れた。
その隙に、恭輔はもう一匹のゴブリンの背後に回り込んだ。
恭輔は剣を振り上げ、一気に振り下ろす。
気配に気付いたゴブリンが振り返るが、遅かった。
悲鳴を上げて、ゴブリンは消えていく。
「おい、どうした!?」
悲鳴を聞いたゴブリンが慌てて戻ってくる。
それを合図に美咲は呪文を唱え始めた。
「火の元素よ・・・我に従い、敵を討て!」
火の塊はゴブリンに向かって飛んでいく。
不意を突かれたゴブリンは、魔法をまともにくらった。
火を消そうと転げまわるが、力尽きてそのまま消えていった。
「ふ~、やっと入れるね」
「ああ、それより大丈夫か?」
「私?まだまだ元気だよ」
美咲は杖を持ったまま、両腕でガッツポ-ズを取った。
しかし、森から休まずに歩き続けたので、実際は無理をしていた。
恭輔の足を引っ張りたくなかったからだ。
「さてと、じゃあ入ろっか?」
「・・・そうだな」
美咲は体に鞭打って歩き出した。
その様子を窺いながら、恭輔も遺跡に入っていった。