第二十六話
「う・・・ん」
美咲は子供のはしゃぎ声で目を覚ました。
「そっか、すぐ寝ちゃったんだ」
家に案内された美咲達は部屋に入るとすぐに眠りについた。
まだ外は明るく、昼を過ぎたぐらいだろうか。
隣を見ると、恭輔の姿はなかった。
「恭輔?どこいったんだろう?」
美咲は起きあがり、部屋を出た。
すると、食卓から聞き覚えのある声がした。
「あれ?ここにいたんだ」
美咲は椅子に座り、食事を摂っている恭輔を見つけた。
美咲の声を聞き、恭輔は振り返った。
「今起きたのか?」
「うん、恭輔は早いんだね」
「いや、俺も起きたばかりなんだ」
美咲が椅子に座ると、長老が料理を運んできた。
「昨日の宴の余りだが、よかったら食べてくれ」
「はい、いただきます」
「おお、そうだ」
長老はそう言いながら椅子に座った。
「村の連中が礼を言いたいらしくてな、このあと村を回ってくれるか?」
「はい、わかりました」
美咲は手を合わせると、食事を始めた。
☆★☆★☆★
「やっぱり若い人もいるんだね」
食事を終えた美咲達は、村の中を歩いていた。
子供達が楽しそうに走り回っている。
「ああ、数は少ないけどな」
美咲達に気付いた子供が、声を上げた。
「あ!救世主のお姉ちゃんとお兄ちゃんだ!」
「きゅ、救世主?」
「うん!爺ちゃんがそう言ってたよ!」
子供の声を聞き、村の老人達が集まってきた。
「おお、救世主様だ!」
『救世主様ー!』
老人達が一斉に声を上げる。
美咲は困惑して恭輔を見るが、恭輔は笑みを浮かべている。
「怪しい宗教みたいだな」
「そうじゃなくて・・・」
「救世主様」
美咲が困っていると、老婆が声をかけてきた。
「うちで梅干しでも食べてないかい?」
「梅干し・・・ですか?」
「なんだ急に・・・この婆さん、ボケてるのか?」
美咲は村人に見えないように、恭輔の手の甲をつねった。
恭輔は小さくうめき声を上げた。
「はい、いただきます」
美咲は笑顔で返事をした。
「そうかい、じゃあ家に来なさい」
美咲達は老婆に案内されて、家に向かおうした。
すると背後から大きな声がした。
「おい!大丈夫か!」
声は村の入口の方からのようだ。
美咲は振り返り、走り出した。
「美咲!」
恭輔は、突然走り出した美咲の後を追った。