第二十二話
「よし、寝ているな」
美咲達が眠りについた頃、照らされた影が障子に映った。
その影は刃物を持った老人達で、部屋の様子を窺っている。
「こいつらは危険な気がする、早くやってしまおう」
一人の老人が暗闇の中、恭輔に包丁を振りおろした。
しかし、包丁の軌道は金属音と共に逸らされた。
その光景を見た別の老人が、急いで明かりをつけた。
すると、気配に気付いた恭輔が剣を抜いていた。
「おい、これはどういうことだ?」
「なんだ、起きてしまったか」
笑みを浮かべた老人の姿が、溶けるように変化していく。
「お前ら、スライムだったのか!」
本来の姿に戻ったスライムは、恭輔に向かって触手を伸ばした。
恭輔は触手を剣で払い、すかさず本体を真っ二つにした。
「美咲!起きろ!」
「う~ん」
大声で名前を呼ばれ、美咲は上体を起こした。
目の前には刃物を持った老人が、大勢でこちらを見ている。
「わっ、なに?どうしたの?」
美咲が慌てているのを確認すると、老人は農作業用の鎌を振り上げた。
恭輔は背後から、老人の体を斬りつけた。
「恭介!なんで・・・」
美咲が言い切る前に、老人は本来の姿に戻り、消えていった。
「今の・・・魔物?」
「ああ、こいつらは全部スライムだ。自分が触れたものに姿を変えることができる」
そう言いながら恭輔はスライムを倒していく。
美咲も杖を出し、魔法を唱える。
しかし、スライムの触手によって、詠唱は中断された。
「なにこれ・・・力が抜け・・・る」
「美咲!」
スライムを蹴散らしながら、恭輔が駆け寄ってくる。
「こいつらの触手は生気を吸い取る。お前も魔法じゃなくて、物理で戦ったほうがいい」
魔法を使うには集中力が必要なため、敵の数が多いときには使うことができない。
恭輔は美咲を戦わせたくなかったが、触手を伸ばしてくるため、庇いながら戦うのは無理だと判断した。
「くそ、数が多すぎる」
いくら倒しても減らない魔物に、恭輔は疲れが出てきてしまった。
美咲は敵の攻撃を杖で払ってはいるが、倒すことまではできない。
二人の周囲を魔物が囲んでいく。
「こんなところでやられてたまるか!」
恭輔は剣を振り回し、魔物をなぎ払っていく。
しかし、恭輔の攻撃を避けたスライムが一斉に美咲に触手を伸ばした。
「きゃあ!」
「美咲!」
無数の触手に阻まれて、恭輔の声は美咲に届かなかった。