第一話
「ミサ~もちろんカラオケいくよね?」
絵里香は帰りのHRが終わった直後に満面の笑みで言った。
「ごめん、この後夕飯の買い物行かなきゃ」
美咲は申し訳なさそうに両手を合わせた。
「そっかぁ、主婦は大変だね~」
絵里香はうんうんと頷いている。
「エリも少しは見習えば?」
雪穂は少しトゲを含んだ言い方をした。
「無理無理、学生の仕事は遊ぶことだし」
「はぁ~」
雪穂はため息をついた。
「じゃあ、また明日ね」
美咲は話を切り上げて、手を振りながらその場を後にした。
☆★☆★☆★
「今日は何を作ろうかな~」
美咲は夕飯の献立を考えながらスーパーに向かった。
「春だしタケノコでも使って・・・ん?何の音だろ?」
突然空気を裂くような高い音が美咲を襲った。
「こっちに向かってきてる?」
「危ない!」
声と同時に美咲は抱きかかえられ、体が宙に浮いた。
ドゴーンという爆発音と共に、美咲がさっきまで立っていた場所のアスファルトが砕けた。
もし、この人物に助けられなければ美咲は跡形も無かっただろう。
「えっ、何!?」
美咲を助けたのは朝に声をかけてきた老婆だった。
「おばあさん!?なんで・・・」
「外れちゃったか~」
美咲の声を遮るように上空から声がした。
「え、と・・・飛んでる?」
美咲は自分の目を疑い、座り込んでしまった。
「レギノスか・・・」
老婆は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「俺のことを知っていたか、嬉しいねぇ」
レギノスと呼ばれた男はニヤニヤしている。
「ふん、お前がこっちに来るとはな」
「え?え?」
美咲は状況がつかめず戸惑っている。
「美咲、早く逃げなさい!」
「おばあさん、なんで私の名前を?」
美咲は今朝会ったばかりの老婆に名前を呼ばれ、さらに混乱してしまった。
「俺が逃がすわけ無いだろう?」
そう言うと、レギノスは勢いよく美咲に向かって突っ込んでくる。
「美咲には指一本触れなせない!」
どこからともなく、老婆の手に杖が現れた。
その杖の先端から炎のようなものが出て、レギノスに飛んでいく。
「くっ!!」
炎はレギノスに当たると、さらに激しさを増した。
「伝説の大魔術士と言われるだけあるな、凄まじい威力だ」
炎の中からレギノスは姿を現した。
「逃げなさい、美咲!」
「あ、は、はい!」
美咲は立ち上がり、駈け出した。
「おいおい、俺が一人でこの世界に来ると思うか?」
レギノスが指を鳴らすと、老婆の後ろから美咲の悲鳴が聞こえた。
老婆が勢いよく振り返ると、美咲が兵士の恰好をした男に捕まっている。
「おっと、動くなよ?
動いたらお前の大事な孫娘がどうなるかわからないぞ?」
「・・・えっ?」
美咲はレギノスの言葉に固まってしまった。
レギノスはゆっくりと老婆に近寄っていく。
「俺の目的はアンタの持ってる杖だが、アンタを生かしておくという命令は聞いてない」
ドスッという鈍い音が響いた。
レギノスが離れると老婆は倒れこんだ。
「お・・・ばあ・・・ちゃん?
いっ・・・頭が!」
そう言った直後、激しい頭痛が美咲を襲った。
アクセスが増えてきて嬉しいです。
初心者なので、変なところがあれば教えて頂きたいです。