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平和な世界  作者: タフボーイ
第一章
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第十六話

「ただいま」


 山を下りた二人は家に帰ってきた。

 下りてきた時はまだ明るかったが、日は沈んで辺りは暗くなっている。

 美咲が怪我をしていることもあり、時間がかかってしまった。

 息子の声を聞き、母は玄関に駆けてきた。


「恭輔!美咲ちゃん!」


 母は、ボロボロだが元気そうな二人の姿に喜んだ。

 不安な表情から、安堵の表情に変わっていく。


「二人とも無事でよかったわ、早く中に入りなさい」


 二人は疲れた体を引きずるように、居間に上がっていった。


 ☆★☆★☆★


「すごいじゃないか、山の主を倒すなんて」


 恭輔の父は何度も頷いている。

 自分の息子が山の主を倒したことが嬉しいようだ。


「さっきも言ったけど、倒したのは俺じゃなくて美咲だ」


 誇らしげにしている父に恭輔は釘を刺した。

 美咲は遠慮がちに首を横に振っている。


「まぁまぁ、いいじゃないの。父さんが喜んでるんだし」


 恭輔の母はお茶を運びながら言った。

 お盆をテーブルに置いたとき、右腕の袖が赤くなっているのが見えた。

 恭輔の母は目を見張り、美咲の右腕を掴んだ。


「美咲ちゃん、怪我してるの?」

「あ、これは大した傷じゃないですから」


 腕を掴まれて一瞬痛みが走ったが、美咲は笑顔で答えた。

 恭輔の母は、美咲の右腕の布を解いた。

 傷口は広く、砂利が入ってしまっている。


「大変!早く消毒しないと」


 恭輔の母は、棚から救急箱を出し、消毒液を取りだした。

 消毒液が傷口にかけられると、美咲は痛みで小さく声を上げた。

 包帯を巻くと、恭輔の母は救急箱の蓋を閉めた。


「ありがとうございます」

「美咲ちゃん、怪我をしていたのか?」


 恭輔の父は、心配そうに美咲を見ている。


「はい、でも本当に大した傷じゃないですから」

「その傷は魔法で治せないのか?」


 恭輔は、美咲が凛に使った魔法を思い出した。


「それが・・・どうやって使ったか覚えてないの」


 美咲は思い出そうと、記憶を辿っていく。

 しかし、あの時は無意識だったので思い出すことができなかった。


「あ、そんなことより」


 美咲は鞄を開けると、薬草をテーブルの上に出した。

 恭輔の父は、目を細めて薬草を見ている。


「それは・・・まさか」

「はい、これを煎じて凛ちゃんに飲ませてあげれば、病気が治ると思います」


 恭輔の父は薬草を手に取り、凝視している。

 薬草を掴む手が小刻みに震えている。

 恭輔の母は、嬉しさで涙目になっていた。


「これで・・・凛の病気が治る」

「はい、すぐには効果が出ないので時間がかかりますけど」

「それでもいい、治るだけでも十分だ。ありがとう、美咲ちゃん」


 恭輔の父は目頭を押さえている。


「俺からも礼を言うよ、俺一人だったら薬草を採ることができなかった。ありがとう、美咲」

「そんな、礼だなんて」


 皆に礼を言われ、美咲は謙遜してしまった。

 無事に薬草を届けたことを実感すると、美咲は軽い眩暈がした。


「美咲ちゃん?大丈夫?」


 恭輔の母は美咲を見つめている。


「魔物と戦って疲れたんだろう、休んだほうがいい」

「そうね、じゃあ二階の空き部屋に案内するわ」

「ありがとうございます」


 美咲は立ち上がると、恭輔の母に支えられて二階に上がっていった。

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