第十五話
「うん、このくらいかな」
美咲は薬草を十束ほど摘むと、立ち上がった。
薬草は磨り潰して飲ませると本に書いてあったはずだ。
本の内容を思い出し、恭輔を振り返った。
「じゃ、帰ろっか」
「ああ・・・その前に」
恭輔は着ている服の裾を少し破り、美咲の右腕に巻き始めた。
巻いた服の一部は、すぐに赤く染まった。
「いたっ」
「少し我慢しろ」
巻き終えると、出血は少し治まったようだった。
「ありがとう、恭輔」
「何も出来なかったんだし、これぐらい当然だ」
恭輔は悔しそうな表情をしている。
美咲は恭輔を見つめ、きょとんとした顔をしている。
「もしかして・・・私の怪我のこと?」
恭輔は無言で頷いた。
美咲はため息をつくと、恭輔の右手を両手で掴んだ。
「私は平気なんだから、そんなに気にしなくていいよ。
それに、恭輔がいなかったら怪我するだけじゃ済まなかったし・・・ね?」
美咲は恭輔の目を見つめて、笑顔で言った。
美咲に励まされた恭輔は、心のもやが晴れた気がした。
「さてと、早く凛ちゃんに届けてあげよ」
「そうだな」
日が暮れ始め、夕日に照らされながら、二人は山を下りていった。