第十四話
「はぁ!」
恭輔は威嚇してくる魔物に切りかかる。
上から振り下ろした斬撃は、魔物の腹に当たった。
悲鳴を上げてよろめいた魔物は、恭輔を睨みつけ飛行した。
攻撃を予測した恭輔は大剣を横にして防御の姿勢をとる。
魔物は攻撃が防がれることを察して、翼を羽ばたかせて、突風で恭輔を吹き飛ばす。
「ぐっ!」
吹き飛ばされた恭輔は岩にぶつかり、剣を手放した。
「恭輔、大丈夫!?」
美咲は魔法を唱えるのを中断し、恭輔に呼び掛ける。
魔物は美咲の方を振り返り、飛行すると美咲の前に降り立った。
「やばっ!」
美咲が身を固めると、魔物は翼で美咲を弾いた。
美咲は地面をすべるように崖ギリギリに飛ばされた。
右腕を擦り剥き、流血している。
美咲は顔を歪ませ、苦痛に耐えている。
「痛った・・・」
痛む右腕に力を入れなおし、杖を握り直すと呪文を唱える。
「火の元素よ・・・我に従い、敵を討て!」
杖に魔力が集まると、杖の先から火の塊が魔物に飛んでいき、翼に直撃した。
魔物は痛みで頭を振り回している。
「よし、もう一回!」
美咲が呪文を唱えようとすると、魔物が振り返り、飛びかかってきた。
魔物の爪が振り下ろされたとき、恭輔が前に飛び出した。
剣と爪がぶつかり、大きな金属音が鳴り響いた。
「美咲、今だ!」
「うん!」
先ほどよりも、杖が大きな魔力を纏っていく。
「雷の元素よ・・・我に従い、敵を討て!」
杖から放たれた電撃が、魔物に直撃した。
電撃は魔物の体全体に広がっていく。
魔物は断末魔の叫びを上げて、消えていった。
「・・・倒したの?」
「みたいだな」
美咲はため息をついて、その場に座り込んだ。
恭輔は剣を納めると、辺りを見回していいる。
「やっぱりそうだったか」
「何が?」
美咲は杖を指輪に変え、恭輔を見上げた。
「魔物がいなかった理由だ。あいつが山の主で、力が強すぎたんだろうな」
「他の魔物が倒されちゃったってこと?」
「ああ、あの骨もあいつの仕業だ。あれだけデカイなら、当然だろう。
結界で出られないしな」
恭輔は何もいないのを確認すると美咲に目を向けた。
美咲の右腕から血が出ているのが視界に入った。
「お前・・・右腕が」
「平気平気、これぐらい大丈夫だよ」
美咲は肩で息をしながら、笑顔で答える。
痛みが激しいのか、少し笑顔がぎこちない。
妹のために体を張っている美咲に、恭輔は心が少し痛んだ。
「さてと・・・凛ちゃんのためにも、早く摘んで帰ろ」
美咲は立ち上がり、薬草に近づくと、しゃがみ込んで薬草を摘み始めた。
「俺は・・・何かできたのか?」
そう呟いた恭輔の声は風でかき消され、美咲に届かなかった。
最近は忙しく、あまり書くことができません。
期間が空くことがあります。