第十三話
何かに遭遇することもなく、美咲達は山の中腹ぐらいまで到達した。
「何もいないね」
「そうだな、魔物がいなくなったのか?」
そんなことあり得るはずがないと、恭輔は辺りを見回した。
すると山道に何かが転がっているのを見つけた。
「あれは・・・」
恭輔が様子をうかがっていると、美咲はそれに近づいて行った。
無防備にも程がある。
「おい、無暗に近づいたら」
恭輔が制止しようとすると、美咲が悲鳴を上げて後ずりした。
恭輔は美咲の隣に駆け寄った。
転がっていたものは頭蓋骨だった。
「こここ、これって・・・頭!?」
「落ち着け、これは骨格からして鳥だ」
恭輔は石につまずき、尻もちをついている美咲に言った。
だが、なぜ鳥の頭があるのだろう。
鳥型の魔物なら体力が尽きれば魔界に送り返される。
魔物は人を襲うが、鳥を襲うとは聞いたことが無い。
「・・・なにが起きているんだ」
「恭輔?どうしたの?」
美咲は不思議そうに恭輔の顔を覗き込んだ。
「なんでもない、先を急ごう」
恭輔は自分の考えが当たっていないことを祈った。
美咲は首を傾げながら、先に進んだ。
☆★☆★☆★
日が落ち始めた頃、美咲達は山頂に着いた。
「着いたね」
美咲は額の汗を拭い、辺りを見た。
岩の陰に、草が生えているのが見える。
「あ、あれかな?」
美咲は薬草に近づいていった。
恭輔は離れた所から、慎重に周りの様子をうかがっている。
すると、足元に一瞬巨大な影が見え、恭輔は瞬時に頭上を見上げた。
「なんだ?」
上空には巨大な鳥が飛行している。
尖ったクチバシで、足は鋭い爪をしている。
翼は体の何倍もあり、全長は十メートル近くある。
「美咲!下がれ!」
「え?」
美咲は恭輔の声に反応して、恭輔の方に振り向く。
巨大な鳥は美咲の背後に降り立った。
強風を感じて、美咲は勢いよく後ろを振り返った。
「魔物!?」
鳥が翼を羽ばたくと、美咲の体が吹き飛ばされた。
「きゃあ!」
「美咲!」
恭輔は、飛ばされた美咲を受け止めた。
「ありがとう、恭輔」
「ああ」
鳥は二人を向いて鳴いている。
敵だと認識されたようだ。
「俺が奴を引きつける、美咲は魔法で狙ってくれ」
「うん、わかった」
恭輔は背負っていた大剣を抜き、両手で持った。
美咲は前に手を出すと、指輪が光り、杖が現れた。
「行くぞ!」
「オッケー!」
恭輔は敵に向かって走り出した。