エピソード9
「おい、正一……今どこにいる?」
『ん? どうした、アオイ?』
「話がある。すぐに会えないか?」
公園のベンチに座る正一を見つけると、アオイは駆け寄り、真正面に立った。
「正一……お前、あの幽霊のこと、本当に何も知らないのか?」
正一の表情が、一瞬だけ固まる。
『……幽霊? なんの話だよ。』
「とぼけるな。お前が、あいつの“最後の希望”を潰したって言われた。」
正一の目が、微かに揺れた。
だが、次の瞬間、彼はアオイをじっと見つめ直し、ため息をついた。
『……いや、それよりお前さ、なんだよその姿?』
「は?」
『いや、普通に可愛いし、なんか妙にしぐさが女っぽくなってるぞ? っていうか、本当にアオイなのか?』
アオイはカッとなり、正一の肩を叩く。
「それどころじゃねえだろ!」
『いやいや、真面目な話、なんでそんな女になってんだよ……』
正一は話をそらそうとするかのように、アオイの姿に視線を向け続けていた。
しかし、正一の顔にはほんのり赤みが差し、目を逸らす仕草が増えていく。
アオイはその変化を敏感に察した。
「おい、もしかして……お前、意識してる?」
『は!? するわけねえだろ! そんな、アオイだぞ、お前……!』
正一は大げさに否定しながらも、アオイの顔を直視できず、挙動不審な様子を見せる。
「ふーん……怪しいな?」
アオイはいたずらっぽく微笑み、さらに顔を近づけた。
「正一、もしかして、俺のこと……女として見てるんじゃないのか?」
『っ……バカ言うな!!』
慌てて顔を背ける正一の耳が、赤くなっているのを見逃さなかった。
アオイは面白がり、正一の頬に指を這わせる。
「ねえ、どうなの? そんなに照れて……かわいいじゃん。」
『なっ……やめろ!!』
正一は顔を真っ赤にしながら、勢いよく立ち上がった。