エピソード3
「まずは落ち着いて、状況を整理しようぜ。」
正一はアオイを自室へ招き入れ、コーヒーを淹れながら言った。
「昨夜、何か変わったことはなかったのか?」
「……特に。でも、夢を見た気がする。」
「どんな夢だ?」
「誰かが俺を呼んでいた。低い声で『お前の新しい人生、楽しめよ』って。」
正一の表情が険しくなった。
「それ、何かの呪いかもしれないぞ。幽霊とか……」
「そんなバカな……って、でも現実にこんなことになってるんだよな。」
アオイはため息をつきながら自分の姿を見下ろした。
「じゃあ、まず調べてみよう。」
「調べるって、どうやって?」
「ネットとか、本とか。あと……変な噂がないか。」
正一はスマホを手に取り、検索を始めた。
「最近、このあたりで何か奇妙な出来事があったか調べてみる。」
* * *
手がかりを求め、アオイと正一は街へ出た。
普段なら気にも留めないような会話が、今は重要なヒントになるかもしれない。
「なあ、最近変な噂とか聞いたことないか?」
アオイはコンビニ前で話していた地元の高校生たちに声をかけた。
「変な噂? ああ、そういえば……」
一人の少年が少し考え込む。
「このあたりでさ、夜中に女の声がするって話、聞いたことあるか?」
「女の声?」
「そう。しかも誰もいない場所でさ、『お前の新しい人生、楽しめよ』って囁くらしいんだよ。」
アオイと正一は顔を見合わせた。
それは、まさにアオイが夢で聞いた声と同じだった。
「……詳しく聞かせてくれ。」
アオイの胸が高鳴る。
呪いの正体に近づきつつあるのかもしれない。